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『ジョークで読むロシア』(菅野沙織) [読書(教養)]

 グローバル金融危機はロシア経済にどのような影響を与えたのか。プーチンはなぜ尊敬されているのか。別荘(ダーチャ)、賃貸住宅、観光から和食ブームまで、ロシア政治風刺小話(いわゆるアネクドート)の新作を織りまぜながら、ロシア出身のエコノミストが解説してくれる祖国の今。新書(日本経済新聞社)出版は2011年1月です。

「さて、ニュースが二つある」
「いいニュースから初めてくれ」
「誰が、いいニュースがあるっていったんだ?」(新書p.5)

「金は悪なんかじゃない。悪はそんな簡単に消えたりしない」(新書p.32)

「小さなビジネスを始めたいんです」
「わかった。それなら、まず大企業を買収しなさい」(新書p.30)

「ここにあるのはお値段ですか、それとも電話番号ですか」(新書p.140)

「税金に投資したいのですが」
「税金・・・ですか?」
「ええ、来年は税率が相当上がると耳にしたもので」(新書p.199)

「ロシア政府が、汚職払拭キャンペーンの延期を発表した。その理由は、キャンペーンに割り当てられた50億ルーブルの資金の行方がわからなくなったからである」(新書p.90)


 国家崩壊、社会体制の激変、ハイパーインフレ、デフォルト(債務不履行)、そしてグローバル金融危機。次々と降りかかる危機にロシアはどう対応し、そして生き延び、成功をつかんできたのか。

 ロシアが抱えている課題の根深さと、それでも巧みに危機を乗り切ってゆくしたたかさ。打ちのめされても意気消沈せず、アネクドートに託して笑いとともに本音をぶちまける国民のたくましさ。意外と知らなかったロシアの実像が明らかになってゆきます。

 さすがにエコノミストなので、金融危機への対応、天然資源依存など経済が抱えている課題、といったテーマに多くのページが割かれています。次にプーチンの話題。庶民生活の話題としては、ダーチャ(別荘)の現状、モスクワで食べられる和食の味、ロシア料理、内装“別売り”マンション売買、国際観光、ソチ冬季オリンピックなどの話題が登場します。

 政治経済の話題だと日経新聞の解説記事のように、専門家らしい硬い調子で書かれるのに、食事の話になると、タイトルからして「ロシア人の主食はパンです」とか「ピロシキの焼き方を覚えたら一人前の嫁」といった、くだけた感じになるのが楽しい。

 というわけで、タイトルだけ見るとロシア小話集かと思いますが、アネクドートは導入というか各章のマクラに使われているだけで、収録数も少なく、それがメインではありません。現代のロシアで何がどうなっており、指導者は何をやろうとしており、国民は何を考えて生きているのか。ロシアの今を、ざっと分かりやすく紹介してくれる本です。


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