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『キッチンぶたぶた』(矢崎存美) [読書(小説・詩)]

 毎年、この季節になるとやってくる素敵なクリスマスプレゼント、矢崎存美さんの人気シリーズ「ぶたぶた」の最新作です。独立した短編4篇が収録されています。文庫版(光文社)出版は2010年12月。

 今回のぶたぶたの職業は「まちの洋食屋さん」です。どういうわけか、ぶたぶたにコックさんはとても似合いますね。フライパンや鍋をどうやって持ち上げているのかは謎ですけど。

 さて、最初の『初めてのお一人様』は、「身体に悪いものを思いっきり食べたい」という、何だか誰にでも思い当たりがある衝動にかられて、入院中の病院を抜け出した病弱少女の物語。彼女が飛び込んだ洋食屋さんの店主が、ピンク色のぶたのぬいぐるみ、山崎ぶたぶた氏だったというわけです。テーマ料理はスパゲッティ。

 続く『鼻が臭い』という衝撃的タイトル(由来は「あとがき」参照)の作品は、臭いや味を感じにくくなったことで悩んでいる中年男性の物語。たまたまスポーツクラブのサウナでよく一緒になるピンク色のぶたのぬいぐるみに相談したところ、料理を教えてもらうことになりました。って、知らない人が読んだらサイコホラーですね、このストーリー紹介。テーマ料理は味噌汁です。

 『プリンのキゲン』は、美味しいプリンに目がないスイーツOLが主人公。あるときクチコミでちょーおいしいプリンを出す店がある、と聞いた彼女はそれから全力で探し回り、ついにその店を発見。ついにありつけたプリンの味は・・・。もちろんテーマ料理というかデザートはプリン。

 そして最終話『初めてのバイト』は、最初の話と対照的に、健康優良少女が主人公となります。風邪で倒れた友人の代わりに洋食屋のバイトに来たものの、店主は何者かに拉致されて不在。拉致というか、ひったくりっていうか、誰かに持ってゆかれたとのこと。奥さんの証言によると、よくあることらしい。あー、それはあるだろうな。

 店主の捜索を依頼された主人公はさっそく聞き込みに出かけるのですが、捜索対象者の外見についてきちんと聞いておかなかったために、妙なことに。目撃者は当然ぶたぶたの正体(というか見たまんま)を知っているという前提で話すため、彼を普通の中年男性だと勘違いしている主人公は、いちいち困惑するはめになります。こういうコメディを書かせると冴えまくりますね。テーマ料理はサンドイッチ。

 というわけで、コメディ中心の楽しい短篇集でした。店を閉め、まかない食べながら、足を組んで棚に置いてあるテレビで韓流ドラマを一人で見ている店主ぶたぶた、彼がサウナに入る理由、などなど、こちらのツボにぐっと入るシーンもあちこちに配置されており、思わず笑ってしまいます。

 「ぶたぶたのアップルパイ」に続き、「ぶたぶたのプリン」商品化もよろしくお願いします。

[収録作]

『初めてのお一人様』
『鼻が臭い』
『プリンのキゲン』
『初めてのバイト』


タグ:矢崎存美
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