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『パリ・オペラ座のすべて』(フレデリック・ワイズマン監督) [映像(バレエ)]

 巨匠ワイズマン監督がパリ・オペラ座バレエ団を撮ったというので話題のドキュメンタリー映画。何だかご大層なボックス入りで何枚か写真などオマケをつけて「完全限定生産デラックス版」と称する、まるで観光客相手の土産物のような版しか売ってないようなのですが、エトワールの写真に興味がない方は、いずれ出るであろう「通常版」を待ってから購入しても良いかも知れません。

 三時間近い大作で、特にストーリーや解説はなく、静かに淡々とパリ・オペラ座の姿が映し出されます。いくつかの公演の振付、稽古、リハーサル、本舞台までの過程を軸に、芸術監督ブリジット・ルフェーヴルおばさんの仕事っぷり、スタッフや職員の勤務風景、オペラ座の建物のあちこち、屋上から見渡したパリの風景、などが折り込まれています。

 とにかくエトワール総出演という感じなので、パリ・オペラ座のファンなら満足できるでしょう。他にも食堂の様子とか、衣装や小道具など裏方さんの仕事場を見ることも出来るし、何気なく映し出される階段や廊下などの光景(屋上の養蜂箱から蜂蜜を回収するシーンもあり)もはっとするほど美しく、大口パトロンを招いたパーティの企画を相談するところなど興味深いシーンもたっぷり。

 個人的には、フランスの年金制度改革に反対するスタッフ組合が大規模ストに突入したとき、ダンサー組合がそれに同調するのを防ぐべく、事務局長が若いダンサーたちを必死に説得するという生々しいシーンがお気に入り。ここでも場をまるめこんでしまう役目はやっぱり女傑ルフェーヴルおばさん。

 コンテンポラリーダンスのファンにとって要注目なのは、何といってもサシャ・ヴァルツ、マッツ・エック、ウェイン・マクレガー、プレルジョカージュ、そしてピナ・バウシュといった現代を代表する著名コリオグラファたちの作品を、断片的ながら、その振付シーンから舞台映像まで通して観ることが出来るということ。

 個人的には、マッツ・エックのデビュー作『ベルナルダの家』の舞台映像が、それもマニュエル・ルグリとマリ・アニエス・ジロ姉さんが出ているシーンが収録されていたのには大感激。マッツ・エック自身が指導しているシーンもあります。すげえ。

 ウェイン・マクレガーの『ジェニュス』は初めて観る作品ですが、これが素晴らしい。思わずはっとするような新鮮な動きが印象的で、心に残ります。しかもマリ・アニエス・ジロ姉さんがソロを踊るシーンがけっこう長時間に渡って収録されていて、これがもう最高。他にアニエス・ルテステュとマチュー・ガニオのパ・ド・ドゥ映像もあり。この作品はぜひ全体を観たいと思いました。

 他に、ピナ・バウシュ『オルフェオとエウリディーチェ』、サシャ・ヴァルツ『ロミオとジュリエット』、プレルジョカージュ『メディアの夢』など。いずれも振付指導、リハーサル、本番舞台をそれぞれ見せてくれます。クラシック系では、『パキータ』(ラコット版)、『くるみ割り人形』(ヌレエフ版)。

 というわけで、もちろんパリ・オペラ座のファン向けですが、最新の現代バレエ作品、その振付指導を行うコレオグラファの姿、リハーサルの様子など、普段あまり見ることの出来ないシーンも多く、コンテンポラリーダンスのファンにもお勧めです。


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