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『Political Mother ポリティカル・マザー』(ホフェッシュ・シェクター振付) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 英国における新進気鋭のコリオグラファ、ホフェッシュ・シェクターの初来日公演を観るために、夫婦で彩の国さいたま芸術劇場まで行ってきました。

 『ポリティカル・マザー』は、先月に世界初演されたばかりという最新作で、振付と音楽の両方をシェクターが担当し、10名のダンサーと8名のミュージシャンが出演する作品です。

 劇場につくと、壁に「本作品では大音量が使われますので、心臓の悪い方、妊娠している方、補聴器をつけている方は係員まで申し出て下さい」みたいな張り紙があり、舞台両袖にはモニュメントみたいな巨大スピーカーが。席が最前列なもので、いったいどんな大音響にさらされるのか、開演前ちょっとドキドキしました。

 実際に始まってみると、何だこの程度かというか、ヘビメタ世代を甘く見てもらっちゃ困るぜというか、別に後遺症が残るほどの大音量でもなく、これなら特に問題ありませんでした。

 というわけで、ドラムが激しく攻撃的に打ち鳴らされ、エレキギターの絶叫が響き渡り、演説の声がわめき散らすなか、ダンサーたちは民族舞踏をベースにしたような苦悶と苦闘のダンスを踊ります。

 軍事独裁政権下で抑圧され苦しむ民衆の姿を描いたと思しき作品ですが、その演出は率直に言ってすごく俗悪っぽくて、あまりイケてません。しかしながら、ダンス自体は力に満ちており、訴えかけてくるものがありました。特に全員で踊る群舞は素晴らしく、気になって後で調べたらやっぱりシェクターはバットシェバ舞踏団出身だったんですね。

 最後に古ーいダサバラード(これまた後で調べたら『青春の光と影』1969年ヒットナンバー)が流れる中、映画のエンドロールよろしく、これまでの舞台の印象的なダンスシーンを高速逆回転させたように動きを逆にして踊ってゆき最初に戻る、という演出はけっこう気に入りました。これ、他の演出家も真似しそうな予感。

 ハードロック調の大音響の中でダンサーたちが次から次へと踊ってゆくシーンのかっこ良さ、ダンスを含む寸劇をつないでゆく構成など、何だかなじみがあるような気が、と思ってよく考えたら、これ『コンドルズ』ですよね。そう思えば、イケてない演出も、ダサい音楽の使い方も、やりすぎ感漂う繰り返しも、すべて納得です。(納得するなよ)

 とか何とか言いながらも、けっこう気に入りました。ホフェッシュ・シェクター。結局ダンスにパワーがあればそれで満足です。これからオハッド・ナハリンを目指すのか、それとも近藤良平を目指すのか、どちらに進むか楽しみなコリオグラファです。


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