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『劣等生の東大合格体験記』(石黒達昌) [読書(随筆)]

 『新化』や『冬至草』など、医療や生物進化をテーマとしたSFを書かせればピカイチ(だと個人的に思っている)石黒達昌さんの最新刊です。「15歳の寺子屋」シリーズの一冊で、単行本出版は2010年2月。

 えー、何しろ『平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士、並びに・・・』という小説を書いた石黒達昌さんのことだから、また変なタイトルの小説を出したのかと思って、ためらうことなくネットで注文しました。届いてみたら、タイトル通りの内容というか、ご自身の体験を元に受験や勉強について中学生の読者に語りかけるという本でした。うう。

「すべての学問は底でつながっているということだ。君の夢を叶えるための素材が、そうしたつながりの中、中学の勉強の中にも確実に含まれている。だから、勉強しておいたほうがいいし、本を読んだほうがいい」(単行本p.45)

「とりあえず君は前を真っすぐ見つめて、理不尽な世界の中にいることを認めながらも、自分のワーク探しのためにここを乗り切ろう。このいまの勉強が、必ず将来の君のためになるんだと信じて、英単語を覚えよう、年表を暗記しよう、化学記号を覚えよう」(単行本p.42)

 という具合に、なかなかいいこと言ってるので、勉強嫌いの15歳の皆さん、あるいは彼らから「何で勉強なんかしなきゃいけないの」と言われて閉口してるご両親、または単に東大に入学するような子どもはどんな風に勉強しているのかを知りたいという好奇心をお持ちの方、などにお勧めです。

 もっとも、私は15歳ではないし、子どもはいないし、自分も東大卒だし、完全に読者ターゲット外。がっかりでした。石黒達昌さんの本なら、やっぱり小説、出来ればSFを読みたいです。

 余談になりますが、石黒達昌さんが東大に合格したのは私と同じ年だったということに本書を読んで気づき、ちょっとびっくりしました。石黒さんは理科III類から医学部へ、私は理科I類から電子工学科へ進んだので、おそらく教室で顔を合わせたことはないでしょうが、四年間のあいだには生協や学食で出くわしていた可能性は高いと思います。同級生だったのか。

 さらに余談ですが、あの年の東大入試問題は、例えば英文読解ではアイザック・アシモフの科学エッセイ(もちろん全て暗記するほど読み込んでいた)、物理では陽子・反陽子の対消滅(もちろん光子ロケットの原理については熟知していた)、というようにSF小僧に対して異様に優しいものが出題されたのです。何か背後に秘密結社の陰謀でもあったんでしょうか。ともあれ、私と同じく、石黒さんも、ラッキーと思ったんじゃないかなあ。

 というわけで、子どもを東大に合格させたいと思っているご両親は、ぜひわが子にSFを山ほど読ませてあげて下さい。30年前の体験に基づく実践的アドバイスであります。


タグ:石黒達昌
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