『道化師の恋』(金井美恵子) [読書(小説・詩)]
金井美恵子さんの代表作の一つ「目白四部作」の第四作です。単行本出版は1990年9月。私が読んだ文庫版は1999年7月に出版されています。
第三部『小春日和』が第二作『タマや』と対になっていたように、本作は第一部『文章教室』と対になる作品です。というより『文章教室』のストレートな続編というべきでしょう。
『文章教室』では不倫に走る主婦が一応の主役的な立場にいたのですが、その娘、ラストで文芸評論家と結婚した彼女が、今作のヒロインとなり、さて何をするかと言うと、やっぱり不倫に走るわけです。
新たな主役として、デビューしたばかりの新人作家とその家族が登場し、ヒロインをはじめとする『文章教室』の主要登場人物たちと知り合いになり、さらには『タマや』の語り手だったカメラマンやその相棒、『小春日和』の小説家のおばさんといった、もはや読者にとって顔なじみの人々とも出会ってゆきます。
やはり登場人物の大半が皮肉や風刺の対象として底意地の悪い書き方をされてはいますが、『文章教室』ほど辛辣な印象はなく、読んでいてまったくしょうがないやつだなあと苦笑してしまうような感じ。そして自分も似たようなものだと気付いてまた苦笑。
エピソードの配置や会話が実に効果的で、はっとするような映画的シーンも頻出します。心理描写や情景描写は思わず驚嘆するほど美しく官能的な文章でつづられ、とにかく読んでいてぐいぐい作中世界に引き込まれます。
個人的には、ヒロインの恋愛相談に対してその友人が言う、「あんたのおかあさんもそうだから、あれね、幼稚が幼稚を再生産するのよね、結婚というものは」(文庫版p.312)というセリフに笑ってしまいました。『文章教室』と『道化師の恋』をたった一言で的確にまとめてますね。
というわけで通読した「目白四部作」ですが、最も感動したのが本書です。何だか読み終わった後に寂しくなり、あーこの先が読みたいなあ、というかこの気持ちよい文章を読み続けていたいなあ、という気分がもやもやと残ります。
四部作と登場人物が共通している作品が今のところ他にも二冊ほどあるようなので、いずれそちらも読んでみようと思います。
第三部『小春日和』が第二作『タマや』と対になっていたように、本作は第一部『文章教室』と対になる作品です。というより『文章教室』のストレートな続編というべきでしょう。
『文章教室』では不倫に走る主婦が一応の主役的な立場にいたのですが、その娘、ラストで文芸評論家と結婚した彼女が、今作のヒロインとなり、さて何をするかと言うと、やっぱり不倫に走るわけです。
新たな主役として、デビューしたばかりの新人作家とその家族が登場し、ヒロインをはじめとする『文章教室』の主要登場人物たちと知り合いになり、さらには『タマや』の語り手だったカメラマンやその相棒、『小春日和』の小説家のおばさんといった、もはや読者にとって顔なじみの人々とも出会ってゆきます。
やはり登場人物の大半が皮肉や風刺の対象として底意地の悪い書き方をされてはいますが、『文章教室』ほど辛辣な印象はなく、読んでいてまったくしょうがないやつだなあと苦笑してしまうような感じ。そして自分も似たようなものだと気付いてまた苦笑。
エピソードの配置や会話が実に効果的で、はっとするような映画的シーンも頻出します。心理描写や情景描写は思わず驚嘆するほど美しく官能的な文章でつづられ、とにかく読んでいてぐいぐい作中世界に引き込まれます。
個人的には、ヒロインの恋愛相談に対してその友人が言う、「あんたのおかあさんもそうだから、あれね、幼稚が幼稚を再生産するのよね、結婚というものは」(文庫版p.312)というセリフに笑ってしまいました。『文章教室』と『道化師の恋』をたった一言で的確にまとめてますね。
というわけで通読した「目白四部作」ですが、最も感動したのが本書です。何だか読み終わった後に寂しくなり、あーこの先が読みたいなあ、というかこの気持ちよい文章を読み続けていたいなあ、という気分がもやもやと残ります。
四部作と登場人物が共通している作品が今のところ他にも二冊ほどあるようなので、いずれそちらも読んでみようと思います。
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