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『モグラ博士のモグラの話』(川田伸一郎) [読書(サイエンス)]

 モグラの研究者によるモグラ学入門書。出版は2009年8月です。

 モグラはごく身近に感じられる動物ですし、動物園に行けばモグラ舎があってその姿を観察することも出来ます。それなのに、実は専門家にもその生態がよく分かってないというのですから、これは意外。まことに驚きです。

 何といっても、「全てのモグラについて、交尾や出産を観察した人がまだ誰もいない」というのはけっこうな衝撃。もちろん飼育下での繁殖に成功した人はいません。他にも、例えばセンカクモグラという種は、何とこれまでにたった一匹しか発見されてないというのです。

 本書はこの謎の生き物、モグラについて様々なことを教えてくれる本です。モグラの毛の生え方から染色体まで。モグラを捕獲する方法、モグラの剥製を作る方法、フィールドワークのコツ(現地のガイドと仲良くなる方法とか、ものすごく実践的)など、モグラ自体よりむしろモグラ研究についての解説の方が充実しています。

 ある意味でモグラよりも謎の生き物なのは、「生物学者」という連中でしょう。本書の半分くらいは、「僕がモグラ博士になるまで」という感じで、著者の研究者人生が紹介されています。

 どうしても生き物の研究者になりたい、その一念で様々な障害を乗り越えて進んでゆくその姿をカッコいいと思うか、呆れるかは人によるでしょうが、少なくとも科学者や研究者を目指す若者たちを勇気づけてくれることは間違いありません。

 というわけで、モグラに興味を持った方だけでなく、むしろ生物学者や研究者がどんな人々で、普段は何をしているのか、その生態に興味がある方にお勧めです。「将来の夢は科学者」という若者は、本書を読んで、研究職に就くための道筋や研究者としての生活の具体的なイメージをつかむとよいかと思います。


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