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『大聖堂』(ケン・フォレット) [読書(小説・詩)]

 巷では往年のベストセラーの続編『大聖堂 果てしなき世界』(ケン・フォレット)が翻訳出版されたという話題でもちきりですが、お恥ずかしながらそもそも『大聖堂』を読んでなかったので、この機会に読んでみました。

 文庫版で上中下巻3冊セット、2000ページ近い分量、12世紀の英国を舞台に大聖堂の建立にまつわる人間ドラマを描いた歴史小説、ということで、読む前はけっこう重厚な作品を想像していましたが、実は波瀾万丈の冒険小説です。

 石工と修道院長を中心とした人々が大聖堂の建立を目指して奮闘するという話ですが、もちろんすんなりとは行きません。さまざまなトラブル、攻撃、謀略が襲いかかり、何度も挫けそうになります。

 建築材は失われ、資金は底をつき、街は焼き討ちされ、天候は暴風雨、天井は崩落、壁にはひび、村は大飢饉、主任技師は謀殺され、職人は全員引き抜かれ、軍や暴徒が攻め寄せてくる。

 不幸と挫折のてんこ盛りで、何度も「こりゃもう駄目だ」となるわけですが、打ちのめされた主人公たちはそのたびに立ち上がり、障害を乗り越えてゆきます。それこそ、堅牢強固な意志の力で。

 面白いという評判に違わず、とにかく面白い小説です。次から次へと事件が起こり、退屈する暇がありません。平穏な情景は数ページも続かず、すぐ戦争、暴動、焼き討ち、メロドラマ、陰謀、裏切り、三角関係、政治闘争、という具合に緊迫したシーンに突入します。

 読んでいる間はめっぽう面白かったのですが、読み終えた後は、私がひねくれているせいか、どうも「面白すぎたなあ」という印象。ジェットコースターのごとく途切れなく事件が起るため、かえって危機感が失われて感情移入が難しくなってしまうのです。週刊連載の活劇マンガを単行本でまとめて読むと、毎週毎週の「引き」の作為性が見え見えというか、鼻について白けてしまうことがありますが、あの感じ。

 そういうわけで、すぐ続編を読む気にはちょっとなりません。しばらく様子を見ることにします。


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