SSブログ

『イワシはどこへ消えたのか -魚の危機とレジーム・シフト』(本田良一) [読書(サイエンス)]

 かつて日本の総漁業生産量の35パーセント以上を占めていたマイワシの水揚げ量は、この20年足らずの間に何と160分の1に激減し、全体に占める割合も0.5パーセントを切ってしまったそうです。何とも衝撃的なデータです。

 そう言えば、確かに食卓からいつの間にかイワシが消えていることに今さらながら気づきました。いったい海に何が起きているのでしょうか。やはりミツバチの集団失踪と関係があるのでしょうか(それは無い)。

「マイワシは1988年をピークに減り始めた。一方で、サンマは1988年を境に増え始めた。後にわかったことだが、この1988年に、海ではわたしたちが気づかない間に「異変」が起きていたのだ」(はじめに)

 つかみはバッチリです。私も書店でここまで立ち読みして、好奇心が爆発しそうになり、慌てて購入して一気に読んでしまいました。

 というわけで、本書は、イワシとサンマの謎から始まって、海洋生態系の「レジーム・シフト」と呼ばれる現象を詳しく紹介し、さらに漁獲量制限など水産資源保護政策との関わり、それが抱えている政治的問題、排他的経済水域などの国際問題、そして地球温暖化の影響、という具合に、現在の水産行政にまつわる状況と課題を具体的に教えてくれる一冊です。

 実は、海洋生態系における「レジーム・シフト」についても、それを提唱したのは日本の学者であり今や世界中で「レジーム・シフトの父」と呼ばれていることも、本書で初めて知りました。水産資源保護の問題についても、とにかく知らないことばかりで、驚きの連続でした。

 他に、マグロの乱獲と日本の「買い負け」問題、エチゼンクラゲの大発生など、周辺の話題も豊富で、海洋生態学や水産行政に興味がある方、単純に「将来、魚が食べられなくなるの?」、「やっぱり国産の魚を食べた方がいいの?」、といった素朴な疑問をお持ちの方にご一読をお勧めします。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0