SSブログ

『シャドー81』(ルシアン・ネイハム) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]

 1977年に新潮文庫から出た、言わずと知れた往年の名作ですが、昨年になって早川文庫から「復刊フェア」の一冊として出版されています。お恥ずかしながら未読でした。書店で平積みになっているのをたまたま見かけて、この機会に読んでみようと思ったのです。

 ベトナム戦争の末期、ロサンゼルス空港を飛び立った747ジャンボ旅客機が、「シャドー81」と名乗るハイジャック犯に乗っ取られます。犯人は機内にいるのではなく、戦闘爆撃機に乗って旅客機の背後にピタリとつけており、要求に従わない場合には撃墜すると無線で脅迫してくるのです。

 しかし、いったい犯人はどうやって戦闘爆撃機を気づかれずに盗み出し、それをロス空港のそばに燃料満タン状態で待機させるという不可能事をなし遂げたのか。また、要求した大量の金塊をどのようにして奪取するつもりなのか。そして、旅客機を解放した後、どうやって行方をくらますつもりなのか。

 犯行準備、決行、そして後始末に至るまで、緻密に丹念に犯人の行動が説明されており、読者は犯人に感情移入した上で、この「作戦」の展開に手に汗にぎりながら読み続けることになります。果たして犯行は成功するのか。犯人は逃げられるのか。

 どう考えても不可能と思える難事の数々を、読者の予想を上回る智略で着実に乗り越えてゆく、これは冒険小説の王道でしょう。犯人、旅客機パイロット、管制官など、主要な登場人物が非常に高いプロ意識を持って自分の仕事をきちんと遂行してゆくのも清々しい。ベトナム戦争末期の混乱や無原則ぶりと対比させる皮肉という一面もあるかも知れません。

 30年以上前に書かれた小説ですが、今読んでも少しも古さを感じさせません。どきどきしながら最後まで一気に読んでしまいました。長さもちょうどいい感じで、完成度の高い冒険小説を読みたい方にはとにかくお勧めです。というか名作と知られている作品なので、今さらこんなことを言うのも恥ずかしいのですが。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 1