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『銃に恋して―武装するアメリカ市民』(半沢隆実) [読書(教養)]

 国内に存在する銃器数2億2300万丁、しかも年間に450万丁ずつ増えており、毎年3万人が銃により死亡する国、アメリカ。銃の乱射など凶悪事件が起きる度に銃規制が叫ばれるにも関わらず、強力なロビー活動により銃規制の強化が断固として退けられる銃社会。そんな米国の現実を取材したルポルタージュです。

 本書が素晴らしいのは、銃規制反対派の人々にインタビューして、その本音を丹念に拾い上げているところ。

 私など、近所の人々が銃を所持し、子供に射撃訓練をさせている、そんな社会に住むなんて想像するだけで嫌な気持ちになるのですが、米国には、心から「銃を持つ自由のない社会には、生きる価値はない」と信じ、「武装の権利は憲法解釈を超えた基本的人権であり、それは日本を含む世界全体の普遍的な理念なのだ」と本気で主張する人々がいる、しかも決して少数派ではない、という事実にはやはりショックを受けました。

 「銃は人間を平等にする」、「銃が行き渡った社会では、人々は互いに礼儀正しくふるまうようになり、治安は守られる」、「銃規制は、黒人や貧困者や女性など力なき者たちから最後の希望を奪い取る弾圧に他ならない」、「銃規制を進めれば、それこそ日本のように、市民に自由がない警察国家になってしまう」といった信念の数々を前にすると、平均的な日本人としては、どうにも越えがたい溝を感じざるを得ません。

 米国籍も永住権も何もない日本人である著者が、銃器購入許可証を得てライフルを購入できるかどうか実際に試してみるくだりは特に面白い。15分で許可証が手に入るというのも凄い話ですが、ライフルを購入しようとすると「別に許可証などいらない」と言われたというのがまた・・・。

 どのような歴史を経て米国は今日のような銃社会となったのか、政治の場で銃規制法案はどのようにして葬り去られるのか、NRA(全米ライフル協会)の会員はどのような人々なのか、など興味深い話題も多数。

 銃社会としての米国の現実を知っておきたいという人、『ボウリング・フォー・コロンバイン』(マイケル・ムーア監督)を観て「銃規制に反対する人々は、本音ではどう考えているのか知りたい」と思った方、ぜひお読みください。

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