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『稲妻6』(坂本康宏) [読書(SF)]

 直球ど真ん中、何のためらいも見せず渾身の力で書き抜けた変身ヒーローもの。初代仮面ライダーをそのまま現代に持ってきたような話です。

「正義は人ではない、物でもない、おそらく力ですらない。正義はただ、心にある想いだ。愛する家族の未来を、少しでもよいものとするために、俺は、戦う!! 変身!!」

という帯の文句にシビれて購入し、

「あの時代から刻(とき)は流れ、我々は正義という言葉を、嘲笑とともにしか口にできなくなった。それでも、あえてもう一度、正義のほんとうの意味を語ろう。君がまだ知らない、君の言葉を借りて。変身、稲妻6(イナズマシックス)」

という巻頭言に血が熱くなる。そういう読者のための一冊です。

 宿主を超人的なパワーを持つ異形の怪物に変化させる恐るべき寄生虫。それに感染した者たちが人喰いとなって暴れ回る中で、ただ一人、命がけで立ち向かう者がいた。家族のために、未来のために、そして正義のために。人は彼をこう呼ぶ、稲妻6(イナズマシックス)と。

 えー、何と申しましょうか、“まんま”です。異形の怪物へ変身することに苦悩し心まで怪物化する恐怖と戦う「主人公」、食欲旺盛で怪しい大阪弁をしゃべるがめついが憎めない太った「相棒」、沈着冷静に指示を与える「長官」、事件の秘密を暴いてゆくがすぐ標的にされる「美人科学者」、登場人物はいずれもステレオタイプなんですが、読んでいてそれが心地よいのですね。

 稲妻6ですが、ストーリー的には仮面ライダー、でも外見や必殺技や寄生虫の力で変身する設定は、むしろ『バオー来訪者』(荒木飛呂彦)を思い起こさせます。カッコイイ。

 出てくる敵も、カマキリ女、ヘビ男、そして主人公と同じパワーを持ったいわゆる「にせライダー」など、やはり“まんま”です。それがなぜこんなに嬉しいのでしょうか。作者が手を抜かず甘えず本気で書いていることが伝わってくるためかも知れません。

 くどくど言うまでもなく、仮面ライダー1号を思い出すと心が燃え上がる人にはお勧め。そうでない人は避けた方がいいかも知れません。私は夢中になって読みふけってしまいました。恥ずかしいとは思いませんとも。

タグ:坂本康宏
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