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『ゴシック&ロリータ幻想劇場』(大槻ケンヂ) [読書(小説・詩)]

 少女ファッション雑誌「ゴシック&ロリータバイブル」に連載された短編を集めた大槻ケンヂのゴスロリ短編集文庫版。『大槻ケンヂ短編集 ゴスロリ幻想劇場』に単行本未収録作7篇を追加し、2篇を除いて、さらに改題したものだそうです。文庫版250ページで20篇収録ですから、1篇1篇はごく短い作品ばかり。

 しかし、「ゴシック&ロリータバイブル」連載作品という時点で、もう私など読者として完全にターゲット外です。

 全編に渡って何らかの形でゴスロリファンションに身をつつんだ少女あるいはそれに類するものが、恋をしたり、涙を流したり、夢を語ったり、虐殺したりされたり、多くの作品でセンチメンタルメルヘンの限りを尽くしていて、私は一人とりのこされたまま。

 とりあえず読みたかったのは『ゴスロリ専門風俗店の七曲町子』という短編で、これは先日読んだ長編『ロッキン・ホース・バレリーナ』の前日譚。義父の性的虐待から逃れて性風俗店で働いていた七曲町子がバンドの追っかけを決意するまでの物語ですが、いやー暗い暗い。

 同じくバンドの追っかけ少女をテーマにした『おっかけ屋さん』も、『ロッキン・ホース・バレリーナ』と同じテイストで読ませてくれます。冴えないおっさんとゴスロリ少女のほのかな恋という設定が素晴・・・。

 他に、妖精軍団と弓道部の少女たちの壮絶な射撃戦を描く『妖精対弓道部』が個人的に好みで、ラスト近くヒロインの叫びが快挙。『巻頭歌―エリザベス・カラーの散文詩』もいかにも大槻ケンヂらしい。

 後は『メリー・クリスマス薔薇香』や『ギター泥棒』みたいに、冴えないおっさんが実は昔ビジュアル系バンドやってたと判明してゴスロリ少女に一目おかれる話は読んでいて嬉・・・。

 あと、オカルト系のネタがふんだんに盛り込まれているのも特徴で、フライングヒューマノイドがくれたパンケーキには塩が入ってないし、レティクル座ゼータI、ゼータIIから宇宙人がやってくるし、空からエンゼルヘアが振ってくるし、アカシック・レコード、コティングレーの妖精写真、フォックス姉妹、なんてばんばん出てくるし、『英国心霊主義とリリアンの聖衣』なんてタイトルからして。はたして「ゴシック&ロリータバイブル」を読んでいるゴスロリ少女たちはここらのネタを分かってくれたのでしょうか。

 というわけで、読者を選ぶ短編集ではありますが、私のような中年男性が読んでも意外と何とかなりました。『ロッキン・ホース・バレリーナ』を読んで素で感動した人ならOKだと思います。


[収録作]

『巻頭歌―エリザベス・カラーの散文詩』
『ゴンスケ綿状生命体』
『妖精対弓道部』
『メリー・クリスマス薔薇香』
『夢だけが人生のすべて』
『戦国バレンタインデー』
『東京ドズニーランド』
『爆殺少女人形舞壱号』
『ギター泥棒』
『ユーシューカンの桜子さん』
『奥多摩学園心霊事件』
『英国心霊主義とリリアンの聖衣』
『ゴスロリ専門風俗店の七曲町子』
『おっかけ屋さん』
『新宿御苑』
『ボクがもらわれた日』
『二度寝姫とモカ』
『サラセニア・レウコフィラ』
『月光の道化師』
『ぼくらのロマン飛行』

タグ:大槻ケンヂ
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