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『マインド・ウォーズ 操作される脳』(ジョナサン・D・モレノ) [読書(サイエンス)]

 米国防総省の資金提供によって進められている脳神経科学の最新研究成果とその軍事的応用について書かれた本です。

 ブレイン・マシン・インタフェース(脳からコンピュータへの直接指示など)、マインド・リーディング(思考内容の読み取り)、兵士のアップグレード(睡眠の抑制、記憶の選択的消去、恐怖心の削除など)、非致死性兵器(音響兵器、嗅覚兵器、エネルギー兵器など)といった最新技術が次から次へと紹介されており、その情報を読むだけでも興奮させられます。

 これらの脳神経テクノロジーはいずれも近いうちに実用化される見込みが高いものばかりであり、決して絵空事ではありません。

 しかし、本書の主題は、これらの脳神経テクノロジーそのものではなく、その軍事的応用にまつわる倫理問題にあります。

 それを論じるために、本書においては、これまで米軍およびソ連軍が、尋問/拷問/洗脳/心理操作/プロパガンダなどに心理学や薬学を応用してきた歴史が詳しく述べられています。実はここが本書で最も読みごたえのある部分なんですが、正直言って、読んでいて気分が悪くなるような内容。

 この部分が重いため、軍事や諜報に応用可能な研究に携わるとき科学者や研究者は倫理的な問いかけから逃げるべきではない、それは危険である、という著者の主張に説得力が出てくるのです。

 ただ、これは翻訳のせいかも知れないのですが、文章があまりこなれておらず、また構成も散漫であるため、読みにくさを感じました。それに、雑多な話題を無造作に詰め込みすぎているという印象も受けます。

 しかしながら、最先端の脳神経テクノロジーやその倫理問題について詳しく書かれている本は少ないと思えるので、この問題に興味がある方には一読をお勧めします。

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