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『くっすん大黒』(町田康) [読書(小説・詩)]

 シリーズ“町田康を読む!”第1回。

 町田康の小説と随筆を出版順に読んでゆくシリーズ。今回は、何だかいきなり野間文芸新人賞とデュマゴ文学賞をかっさらった衝撃のデビュー作『くっすん大黒』です。単行本出版は1997年3月。私が読んだ文庫版は2002年5月に出版されています。

 収録されているのは『くっすん大黒』と『河原のアバラ』の2篇。どちらも似たような話で、人として駄目な主人公が、色々と駄目なことをしたり考えたりした挙げ句、やっぱり駄目でした、というような。

 主人公のあまりといえばあまりの駄目さ加減に呆れつつ、落語のような抜けた会話、ぽんぽん飛び出てくるギャグ、躍動感あふれる個性的な文章に乗せられて、どんどんどんどん川を下るように読み進めて、下って下って、ふと気がつくともう後がない。ああ、やっぱり駄目だった。まったく可笑しいやら情けないやら哀れやら。

 まあ、『くっすん大黒』における“大黒”は人の業というか救いようのない愚かさのようなものを象徴しているのだろうとか、これは太宰治だなとか、筒井康隆だなとか、解説によると「梶井基次郎の『檸檬』のパロディなのである」だとか、色々と考えてしまいそうになる作品ではあるのですが、ただの「いちびり小説」として読んで大いに楽しめます。

 構成とか各エピソードのつなげ方など、ややぎこちなさを感じる面もあるのですが、とにかく文章の強烈な個性で最後までいちびり倒してしまう、そのパワーには脱帽です。読後、何だか癖になって、すぐに次の作品を読みたくなる、そういう中毒性があります。

 何でここまでいちびりなのかと思ったら、この人、私と同じく1962年大阪生まれだそうで、それじゃまぁ仕方ありません。

町田康を語る言葉コレクション

「文学の功徳というものだ」(三浦雅士)

     文庫版『くっすん大黒』解説より

タグ:町田康
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