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『排気口』(イデビアン・クルー、井手茂太、安藤洋子、斉藤美音子) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 「★特集 コンテンポラリーダンスの現在」と題した10月10日のNHK教育「芸術劇場」で、イデビアン・クルー最新作『排気口』の舞台映像、BATIK『SHOKU』の特別収録版、2本を放映してくれました。もちろん、しっかり録画しましたとも。

 今日は、まず『排気口』の観賞です。2008年8月23日、世田谷パブリックシアターで収録された映像。

 この公演で何と言っても話題となったのが、フォーサイス・カンパニーの安藤洋子さんをゲストとして招いたこと、そしてそれを迎え撃つべく井手茂太その人が踊ったということ。一部で大騒ぎになっていた注目の舞台です。

 舞台設定は旅館と思われる場所。中央に畳敷きの和室が作られ、その周囲を障子を隔てて廊下が囲むという構成です。そこで着物姿のダンサーたちが何とも奇妙な踊りを繰り広げます。

 部屋の中でも外でも様々なやり取りが同時進行し、つながりがあるようなないような、同期しているようなしてないような、その微妙に分からない関係性がミソ。井手茂太さんの振付演出の醍醐味です。

 演劇っぽい雰囲気はありますが、あくまで「芝居によくある仕種や動きをもっともらしく取り込んだ」コンテンポラリーダンスです。特にストーリーとか設定とかはありません。が、無意味なシーンを次々と繰り出しているだけなのに、何だかストーリーがあるような気がしてくるところが面白く、まるでロールシャッハテストみたいです。

 和服を着て踊る群舞は、妙に格好よいところが滑稽というか、ダサいところがイケてるというか、イデビアンクルー特有の珍妙な味わい。今や正気で聴くのは難しい昭和歌謡をバックに大真面目に踊って観客を脱力させる例の手口も遠慮なく使われています。

 安藤洋子さんと井手茂太さんが踊るシーンが何カ所かあり、ここは本当に凄い。

 安藤さんの切れ味鋭いシャープな動きは尋常ではなく、井手さんの柔軟でスムーズな動きもまた人外。鶴と亀の共演というか、富士山vs茄子の対決というか、ハイレベルかつ意味不明なダンス対話に思わず息を飲んで見入ってしまいます。とんでもないものを観たような気がします。

 公演そのものは良かったのですが、難があったのはカメラワークです。例えば、どう考えても観客が気にしないような場所とタイミングで無意味に演技をしているやつ。明らかにその間抜けさこそが狙いなのに、カメラがその演技を大映しにする。それじゃ演出意図が台無しでしょう。

 他にも、中央で安藤さんと井手さんが踊っているというのにわざわざ別の出演者を映したり、あくまでダンスとして「演劇風に」動いているだけなのに顔を大写しにしたり。どうも、撮影も映像編集も、これがダンスであって演劇ではない、ということの意味がよく分かってないのではないかという気がします。

 というわけで、映像としての完成度には疑問があり、これなら舞台を生で観るべきだったと悔しい思いをしました。


「振付・演出」

井手茂太

「出演」

井手茂太、安藤洋子、東さくら、金子あい、斉藤美音子、菅尾なぎさ、中尾留美子、依田朋子、小山達也、中村達哉、佐藤亮介、原田悠、松之木天辺

「収録」

2008年8月23日 世田谷パブリックシアター

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