SSブログ

『遠すぎた星(老人と宇宙2)』(ジョン・スコルジー) [読書(SF)]

 好評だった軽快スペースオペラ『老人と宇宙(そら)』の続編です。またも悪ノリした邦題がついていますが、原題は"The Ghost Brigades"、つまりコロニー防衛軍の精鋭、一般にはほとんど存在すら知られていない特殊部隊「ゴースト部隊」のメンバーが主人公となります。

 このゴースト部隊ですが、何しろ秘密部隊ですから汚れ仕事がメイン。作中でも、暗殺、誘拐、脅迫など陰惨な作戦ばかりに従事しています。エイリアン種族に対する情け容赦ない仕打ちときたら、犠牲者が白人でさえなけ・・・人類でさえなければ何をしても「正義」なんかい、という感じ。読んでいて嫌な気になります。

 その上、主人公にはいわゆる暗い出生の秘密というやつがあって、それは人類を裏切ってエイリアン種族に協力している科学者のクローンとして作られ、しかも保存されていたその科学者の「精神」が潜在意識に埋め込まれているということ。

 ただでさえダーティなゴースト部隊、しかも自分が抱えている他人の「精神」がいつ覚醒して自我を乗っ取るか分からない、というアイデンティティの不安を抱えた主人公。そういうわけで、前作ほどはしゃいだ作品ではなく、どちらかと言えば暗めの雰囲気になっています。

 お馴染みの「自分の運命を自分で選択すること」(どうも米国人はこのテーマが大好きなようです)が主題になりますが、まあ基本的にはコンピュータゲームもどきのアクションシーンが中心となる娯楽小説であることに変わりはありません。

 「結局、前作とあまり変わらないなあ」とか思いながら読んでましたが、ラスト近く、主人公とそのオリジナルが対決するシーンで明かされる真相はけっこう意外で、(後知恵とはいえ)シリーズの基本設定をひっくり返すパワーに感心しました。主人公の「最後の選択」も、お約束とは言え、うまい決着だと思います。

 というわけで、読後感はかなり好印象。三作目が翻訳されるのが待ち遠しいところです。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0