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『コリオグラファーは語る』(ダンスマガジン編) [読書(教養)]

 世界的に活躍している5人の振付家(コリオグラファー)、ローラン・プティ、モーリス・ベジャール、ジョン・ノイマイヤー、イリ・キリアン、ウィリアム・フォーサイスへのインタビュー集。

 1990年代の中頃に『ダンスマガジン』に連載された記事を単行本化したもので、聞き手は三浦雅士さん。

 10年以上前の古い情報ではありますが、それぞれ自分の生い立ちや創作についてかなり突っ込んだ話をしていて面白いです。

 個人的に興味深かったのは、それぞれ他の振付家に関する評価を驚くほど率直に語っているところ。例えばフォーサイスはこう言い放ちます。

「ノイマイヤーの仕事はまったく評価していない。まがい物だと思う」

 さすがに言いすぎたと思ったのか、すぐ後に

「むしろ、彼は偉大な映画監督なんじゃないかな。(中略)彼の映画作品は評価するけれど、彼のコリオグラフィーは好きじゃないな」

とフォローしますが、そこで控えめになり過ぎたと思ったのか、続いて

「彼(ノイマイヤー)のダンスはいいとは思わない」

とむきになって繰り返したりして。他にもこう語ります。

「(キリアンは)音楽の感覚についていえば巨匠だと思う」

「私は彼女(ピナ・バウシュ)のあの音楽の感受性がとても好きだ」

「ケースマイケルはいいと思いますね。あの舞台は好きです」

だそうで、誰をライバル視しているかバレバレ。そして、音楽性ではなく振付でトップは誰だと言いたいのかも。

 一方、キリアンはこう語ります。

「フォーサイスの作品は昔から大好きです。非常に才能があって、彼こそ未来の振付家だと思う」

 褒めつつも、あくまで「未来の」と付けるのを忘れないところが大人ですね。

 ノイマイヤーはこう。

「(バランシンについては)あまり興味がありません。実はあまり多くは見ていないのです。彼のスタイルにはそれほど興味は惹かれない」

ちょっと言いすぎたと思ったのか、直後にこうフォローします。

「(バランシンは)構成はもちろん、音楽的にも素晴らしい。しかし、人間性はというと、何か足りないのではないか」

それはフォローというより駄目押しです。

 ベジャールはこう。

「もっとも評価しているのはピナ・バウシュです。彼女はとても頭のいい振付家ですよ」

「キリアンは特殊ですね。(中略)私の考えでは彼は現代のバランシンです」

 褒めているのかどうか微妙なところ。

 というわけで、世界でもトップクラスの振付家たちの本音をばりばり引き出した三浦雅士さん、いい仕事してます。出来れば、最近のインタビューを単行本にまとめて欲しいと思いました。

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