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『カットスロート』(マイケル・スレイド) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]

 シリーズ“またマイケル・スレイドを読んでしまった”その3。

 さて、まだまだ読むぞ、スレイドを。

 悪名高いマイケル・スレイドを、発表された順番に読んでゆくシリーズ、今回は、第3作目の『カットスロート』です。

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 『グール』以後、四年にわたって新作が発表されず、「やはりあれ以上のヘンな小説は無理だったか、まあこれでノーマルなミステリ・ファンは落ち着いて、枕を高くして眠れるわい」(笑)と思っていたところ、五年ぶりに新作を発表するとの情報が英米の出版業界を震撼させた。(解説より)
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 えらい言われようですが、これが宣伝文句になるというのが、スレイドのスレイドたるゆえん。

 というわけで、何かを震撼させてしまった本書『カットスロート』ですが、前二作『ヘッドハンター』と『グール』の続編です。両作それぞれの主役たちが再登場してタッグを組みます。それに、大きな声では言えませんが、両作それぞれの犯人たちもちゃんと再登場します。

 設定もパワーアップ。カナダ連邦警察は、国際的重大犯罪に対処するための対外特捜部“スペシャルX”を創設。『ヘッドハンター』の主要登場人物がスペシャルXのメンバーとして抜擢されます。

 敵もパワーアップ。これまでのような個人的サイコ野郎ではなく、“1万2千年に渡って中国を闇から支配してきた謎の一族”が放つ、一子相伝の暗殺者(カットスロート)が次々に人を殺してゆきます。というかハッタリにもほどがあるだろう。

 謎もパワーアップ。UMA(チベットや北米大陸の山中をうろついているアレ)が握る人類の起源をめぐる秘密とは。それに遭遇して消息を絶ったらしい捜査官の運命は。その秘密を追うカットスロートの狙いは何か。ロッキー山脈を舞台に今、「中国秘密結社 vs スペシャルX」の熾烈な戦いが始まる!

 ・・・バカです。

 いやー、これまでの作品だって充分にバカだったのですが、何と言うか「どうしようもなく好きで書いてます。読者など眼中にありません」という、さわやかなバカだったのが、どういうわけか本作は「読者のウケを狙った小利口なバカ」になっていて、そこが個人的にガッカリです。

 いや、これまでと比べて構成もしっかりしているし、殺害や拷問などの残虐シーンは控えめ(といっても強烈なやつもあるので油断大敵)、何より読んでいて混乱しないでストーリーがきちんと把握できるという、普通の意味で小説としての完成度は着実に高まっているんです。しかし、そのためにかえってバカが際立っているような気がします。

 で、恒例の「最後のどんでん返し」ですが、もう三作目ですから慣れてきて「どうせ最後の最後にカットスロートの意外な正体が明かされて読者驚愕という仕掛けだろ」と思って読んでいたんですが、おおおい、ま、まさか、アンフェアと言うか、これマジで×オチかよ! あまりのことにビックリ仰天して油断したところで、その後に用意されている不意打ちにやられるという仕掛け。

 とにかく最後に読者を驚かせるためなら何でもアリ。それがスレイド。

 というわけで、前二作に比べて小賢しくまとまって読みやすくなった感もありますが、やはりしょせんはマイケル・スレイド。こういうのが好きな人にだけお勧めします。

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