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『だいにっほん、ろりりべしんでけ録(群像2007年12月号掲載)』(笙野頼子) [読書(小説・詩)]

シリーズ“笙野頼子を読む!”第37回。

 先日、ようやく『だいにっほん、ろんちくおげれつ記』が単行本化されたかと思ったら、いよいよ三部作完結編が掲載されました。

 単行本化されてから読もうかとも思ったのですが、いったいこのシリーズをどうやって終わらせるつもりなのか、どんどん気になってきて、とうとう『群像』2007年12月号を買って読んでしまいました。

 ちゃんとした感想は単行本が出てから書くとして、とにかくものすごい展開。読んで腰を抜かしました。

 20代の桃木跳蛇、30代の沢野千本、40代の八百木千本。過去の作品で主役をつとめた作者の分身たちが、再登場するんです。ええ、八百木千本なんか巨大化しておんたこを殴ります。

 しかも『レストレス・ドリーム』のスプラッタ・シティがだいにっほんに、『二百回忌』の郷里がみたこの共同体に、という具合に、これまで四半世紀に渡って書かれてきた作品が、どんどん本シリーズと習合してゆきます。

 作者は『金毘羅』でカミングアウトしてからずっと金毘羅のままだし、ついに作中に市川頼子(本名)が出てきます。もともと本シリーズは、視点人物が次々と切り替わって各人がそれぞれに自分語りをするという構成で書かれているのですが、さらにそこに、市川頼子・金毘羅・笙野頼子・八百木千本・沢野千本・桃木跳蛇、という多重視点が加わるという、何と言ったらいいのか、ええ、少なくとも私小説ではないと思います。

 だいにっほんシリーズを完結させるだけでなく、これまでの笙野作品を総括するような記念碑的作品ですが、要約すると「マルクスとエンゲルスによるフォイエルバッハ批判におんたこの本質を見た」という話です。たぶん。

 というわけで、シリーズ第一作『だいにっほん、おんたこめいわく史』を読んだ衝撃のあまり笙野頼子の全単行本読破に取り組んだ私のこの一年は、つまり本作品を読むための準備だったのだなあ、と。しみじみそう思いました。

タグ:笙野頼子
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