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『昆虫 驚異の微小脳』(水波誠) [読書(サイエンス)]

 ハエの飛行やミツバチのダンス言語など、昆虫が神秘的とも思える凄い能力を持っていることは、色々な本で読んで知っていましたが、それらを「神経系の制御メカニズム」という観点から最新の研究成果を解説してくれる本です。

 視覚、嗅覚、飛行姿勢制御、景色記憶、空間地図作成とその伝達、といった数々の難事を実行する、わずか1立方ミリメートルに満たない神経塊。著者は、我々の“巨大脳”とは別の原理で動作する脳、“微小脳”という概念をたよりに、その秘密に切り込んでゆきます。

 現在までに分かっていることを示すだけでなく、それを誰がどのような実験で発見したのかをきちんと教えてくれるのも素晴らしい。事実もさることながら、むしろ、数々の実験の面白さ、超絶さ(アリの神経に極微電極を差し込むとか)の方が興味深かったりします。

 新書にしておくのが惜しいほどの情報量。内容が濃いので、読み流すことは出来ませんが、難解ということはありません。なお、特に興味深い事実や重要な知見は太字で印刷されているので、そこを押さえておけば論旨を見失うことはないでしょう。

 帯に「小型、軽量、低コスト」とある通り、昆虫の微小脳がある意味で我々の脳をはるかに凌駕する効率的な情報処理システムだということが次第に分かってくる興奮。心揺さぶられる良書です。

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