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『Sleeping Beauty』(マッツ・エック版) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 スウェーデンの振付家マッツ・エックが、古典バレエの名作『眠れる森の美女』を再振付した作品です。

 全体的にストーリーや演出が下品かつ悪趣味。

 オーロラ姫はセーラー服でお下げの女子高生。親に反抗して不純異性交遊に走る、煙草を吹かす、ドラッグを打つ、もう素行不良の限り。

 カラボスは黒人の大男で、オーロラ姫と後背位でヤッて妊娠させてしまうし。

 王子サマは金持ちのTVプロディーサーで、「この腐れ移民! 社会のダニ! 人殺し! 黒んぼ!」などとわめきちらしながら、カラボスを拳銃で撃ち殺します。

 この辺、別に社会風刺とかそういうのではなく、単に悪ふざけというか批評家をからかっているだけのようです。いきなり登場人物が「こんなのはクレージーだ、原作に対する冒涜だ、何がやりたいのかさっぱり分からん」などと作品自体をけなし始め、とりなそうとしたマッツ・エック(特別出演)をなぎ倒してしまう、というシーンあり。

 で、ダンスそのものに注目すると、これは凄いです。何といっても動きがシャープでカッコいい。先週見たジゼルより数段進んでいます。

 盛り上がってくるといきなりダンサーが分裂増殖、つまり主役と同じ格好した群舞がいきなり乱入してきて並んで一斉に踊るという、「おおっ、その手があったか」と思うような振り付けが楽しい。

 いくつかのパ・ド・ドゥは、震えがくるほど素敵です。特にオーロラ姫とカラボスが踊るシーンは感動的で、ここだけ何度も見直してしまいました。

 あと、相変わらずというか、オーロラ姫、強いです。男性ダンサーの腹に後ろ回し蹴りを叩き込んだり、床に倒れ伏した男性ダンサーを踏みつけてジャンプしたり、当たり前のようにこなしていました。

 これだけダンス作品としてのレベルが高いのだから、別にわざと下品で悪趣味な設定にしなくても良かろうに、と思うのですが、たぶんこれは作風というものなのでしょう。

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