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『モーアシビ 第41号』(白鳥信也:編集、小川三郎・北爪満喜・他) [読書(小説・詩)]

 詩、エッセイ、翻訳小説などを掲載する文芸同人誌、『モーアシビ』第41号をご紹介いたします。


[モーアシビ 第41号 目次]
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 『季節を待って』(島野律子)
 『鼓動』(北爪満喜)
 『雲』(小川三郎)
 『PUMA』(森ミキエ)
 『斑の朝』『関数夜』(森岡美喜)
 『さっぴらい』(白鳥信也)

散文

 『北爪満喜詩集『Bridge』 嘘を〈まこと〉にする愛の歳月』(阿部日奈子)
 『バルトの歪んだ大きな真珠~ラトビア・首都リガ』(サトミセキ)
 『送電線下伐採』(平井金司)
 『わが青春の日記(その一)』(清水耕次)
 『風船乗りの汗汗歌日記 その40』(大橋弘)
 
翻訳

 『幻想への挑戦 15』(ヴラジーミル・テンドリャコーフ/内山昭一:翻訳)
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 お問い合わせは、編集発行人である白鳥信也さんまで。

白鳥信也
black.bird@nifty.com




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眠れなくてぐにゃりとした視界に
小さな苺が実っている
ここでは暮らせない蛇の苺は
誰にも食べられずに
夢の後ろのテールランプ 灯す
ぐにゃりとして
苦しみはにゅるっと
握りしめられずに
指のあいだから逃げていく
しゃがみこんでしまった膝に
草には朝露が輝いて
まだ蕾の仏の座が教えを説く
道には
これから花開くものがいっぱいさ
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『鼓動』(北爪満喜)より




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蜘蛛の想いというものが
わかってしまうときがある。
家のなかや家の外で
音もさせずに暮す蜘蛛の
ただひとつだけの真実が
私の胸で膨れ上がって
そのまま破裂させてしまうような
そんなときが時折あって
めちゃくちゃになって気が付くと
遠くをながめていたりする。
今まで何を想っていたのか
すっかり判らなくなっていて
きっとまた私はずっと
ここに座って
雲をながめていたのだと思いだす。
――――
『雲』(小川三郎)より




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私はPUMA上昇気流に乗る
宇宙から見下ろす地球 大気圏 一層目は皮膚 潤いを取り戻し 二層目は布 汗と熱を吸い込んで 三層目は空気 広大なものへ溶け込んでいく 生から死へ流れる時間 私はまだここにいる PUMA私は疾駆する 骨格と血と筋肉を獲得して この大空は故郷の大陸へと続く Tシャツでは覆いきれない肉体の森林へ つややかな毛並の草原へ シシャモやメザシに未練はない 四肢に力をためると痩せた薄っぺらなカラダに精気が甦ってくる 太陽に向かってジャンプした
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『PUMA』(森ミキエ)より




――――
茫々と冷たい風が吹きすさぶそのなかを
沢水をけって狼が走る
木々を猿が飛ぶ
小石の多い乾いた川の
ずっと見えない底を流れる
蝦夷の言葉の記憶だろうか

農道は舗装され
オオバコやスカンポが刈り払われてもなお
呼吸し生きている
さっぴらい
おいのざわ
どこまでも走るがいい
口から口へ
耳から耳へ
流れ続ける響きの川となって
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『さっぴらい』(白鳥信也)より





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