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『女肉男食 ジェンダーの怖い話』(笙野頼子) [読書(小説・詩)]

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 結論、ジェンダーという言葉を使ってする言葉遊び的なカルト思想=ジェンダーイデオロギー、私はまずこれを批判しその危険性を報道するしかない。
 学問としてではなく、市井の私小説家として、ジェンダーという言葉が新世紀に入り、どのようにおかしくなり狂ってきたかを今ここに告発する。
 その上で右も左もないこの不可解な事態を可視化したいのだ。
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単行本p.10

 シリーズ“笙野頼子を読む!”第139回。

「けして美しい総論などやっている場合ではありません。(中略)私は仕上がりかけの私小説(自信作)を放置して、一番最後の章を大幅改稿しました」(単行本p.114、115)

 『笙野頼子発禁小説集』出版から一年、その後の情勢を報道する「二冊目のターフ文学」(単行本p.85)ついに刊行。報道と報告と解説と批判と告発と糾弾のあれこれが文学的火砕流となっておしよせる炎上の一冊です。




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 新世紀二十年、先述のように、今この反ジェンダーは御禁制なんです。議論、批判、質問も禁止、反差別最強のタブーになっています。するとジェンダーは守るべき規範なんですかね? 女に押しつけられた性役割を守る? その理由は? ね、判らんでしょ?
 ともかくこれなかなか見抜けないけど危険だろう・表現の自由で告発しようよ・文芸誌なら自由に書けるはず、と私はやってみた。すると、あれれ、書けない! しかもふと気が付くと、仕事は消え、没続き、貧乏になっていました。そう、ジェンダー批判の祟りなんですね。
 カード、質屋、友人に借金して生き延びる私、その上私の存在それ自体ばかりか、顔出し、発言、飼い猫まですべて、過去作品までもが「このヘイター(憎悪煽動者、ナチスっぽい何か)め! 消えてしまえ!」と、本当に消されようとしていました。
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単行本p.20




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 最新作『笙野頼子発禁小説集』にも私はただ、事実を書いただけです。TRA(後述)からは「ヘイトスピーチだ、書店は平積みするな」と言われたけど。しかも読者がネットでそう言った相手にその理由を問うと「理由を聞くのもヘイトだから、お前もヘイター」と言われてるけれど。その上さらに「だからどの部分の何があかんのか」と、別の元気な読者が聞くと「お前はナチスか虐殺が好きか、さあ差別やめろ黙れ」って、要は? 結論――「おれらが差別認定したら、それは差別なんだ、質問、議論、聞き返し、やったらいかん」と言う事でした。まあでも想定内ですね。ここ四年間こればっかりでしたし。
 結果? 書店はひるまず読者は駆けつけ、ジュンク堂池袋本店七位、王様のブランチに映り、一週間で増刷。この本少しだけど新聞雑誌に出して貰えて、報道の契機にはなりましたね。
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単行本p.37




 前作『笙野頼子発禁小説集』を読んでおらず、あるいは読んでいても、何をどうしてもめているのか全体像が把握できず、ネット上の論争というか罵り合いをみても相手を糾弾するための「お作法」しかつかめない、と困惑している方にもお勧めの、一年ぶりの新作です。長年の読者にすれば、おんたこ、ひょうすべ、メケシ、という構図もそれなりに見えてきます。

 とはいえ本書の内容を的確に要約して紹介するのは難しく、またそんなことに挑戦してもゼッタイに誤解を招くだけだと思うので、ここでは出版社による紹介と目次へのリンクを示すにとどめておきます。興味ある方は(ネット上の紹介や要約ではなく)現物を読んでください。




鳥影社による書籍紹介
https://www.choeisha.com/pub/books/20162.html




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 私は実在の彼らを批判しはじめて五年程になります。
 ポストモダン、クイアのもたらす未来の地獄絵図として書いたのは遅くとも2006年からです。冒頭に書いた『水晶内制度』はその前哨戦です。今の心境は? これは発禁小説と同じ事です。逮捕されるまで書いて報道します。
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単行本p.116




 逮捕はともかくとして、経済状況や病状やピジョン(猫)を心配する読者は、もう少しだけ待てば報われるようです。Female Liberation Japan への投稿から二つ引用しておきます。




「今年も押し詰まってまいりました」(2022年12月27日投稿)より
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 来年四冊出す本の、三冊まで大半完成しています。(中略)
 この四冊のうち二冊は文庫本です。解説、著者校ほぼ終わり、版元は無論、講談社でも河出書房新社でもありません。まず『未闘病記』で一冊、後は『母の発達』と『アケボノノ帯』を一冊にしたもの、『アケボノノ帯』の解説の方に、「狸の言葉(知る人ぞ知る)」の人語訳を入れています。他の二冊は書き下ろし。一冊は闘病記・私小説、執筆中、後の一冊は?
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https://femalelibjp.org/nf/?p=1001




「「人権モデル」=ウーマンウィズペニス、を肯定する某党へ、最後のメール」(2023年4月5日投稿)より
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 なお、この新刊は、ネットを見ない同世代や忙しい方々に向けたつもりです。皆さんには物足りない部分があるかもしれません。
 「高くてもいいから分厚いのを出してくれ」とお思いの文学読者の方は、書き下ろし私小説を大半仕上げましたので、もう少しお待ちくださいませ。でもその前にこれもぜひともお読みください。
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https://femalelibjp.org/nf/?p=1016





タグ:笙野頼子
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