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『素数ゼミの謎』(吉村仁) [読書(サイエンス)]

 13年、あるいは17年に一度だけ大量発生する「素数ゼミ」。いったん発生すると半径数十メートルというごく限られた地域に、実に数十万匹がいっせいに羽化して鳴きだすという不思議なセミですが、その発生間隔はなぜ素数年なのでしょうか。

 本書は、この謎について著者が書いた論文の内容を、一般読者向けに簡単に説明するものです。

 素数ゼミの謎解きを通じて進化論の基本を学んでもらおうという狙いで書かれており、文章は極めて平易で、漢字にはルビが振ってあり、カラーイラストも多数収録されています。小学生高学年であれば問題なく読みこなせると思います。

 ときどき進化のことを、生物が「より優れた種」に変化してゆくことだと思い込んでいる人がいるのですが、本書を読めばそうでないことはすぐに分かるでしょう。17年間隔で同期して羽化するセミが、そうでないセミよりも「優れている」と思う人はいないでしょうから。

 子供にも読めるように簡単に書かれてはいますが、「たとえ話」を使って雰囲気で逃げるようなことをせず、定量的な議論も含めて性淘汰の本質がきちんと書かれているのは立派だと思います。さぞや執筆には苦労されたことでしょう。

 大人が読んでも面白いのですが、やはり子供たちに読んでほしい本です。生き物の「不思議」にはちゃんと理由があること、その生き物の祖先が過去にどのような環境で生きてきたのかを考えるのが大切であること、など基礎を学ぶことが出来ると思います。夏休みの課題図書としてどうぞ。

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