『スパムメール大賞』（サエキけんぞう）

　2005年に出版された『ネット限定恋愛革命 スパムメール大賞』（サエキけんぞう）を改題の上、大幅に加筆・修正したという文庫本。

　これは著者が受信したスパムメールのうち、面白いものを厳選して掲載し、鋭いツッコミを入れつつ紹介するというものです。単行本では2005年の「作品」が中心でしたが、文庫版ではその後2008年までがフォローされています。

　で、何だか安直な企画だなあと思いつつ好奇心に負けて、というか普段毛嫌いしてフィルタリングソフトで自動的にゴミ箱に捨てているものをわざわざ金払って印刷物として読むという一種倒錯した行為に惹かれて、目を通してみたのですが、こ、これは凄い。

　思わず吹き出す無茶なスパム、頭が異次元に飛びそうなシュールなスパム、思わず考え込んでしまう不可解なスパム、味わい深い文学的スパム。スパム、スパム、スパ～ム。一気読みすると悪酔いしそうです。

　この「変」をご理解頂くべくいくつか引用しようかとも思ったのですが、日記の品位が著しく下がりますし、気合の入ったキーワードで祈るように検索して読みに来た人を落胆させるのも気の毒なので、やっぱ止めておきます。

　またサエキさんの「嘘だと知りつつ、これらが全て真実であるような“パラレルワールド”を想像して楽しむ」という立ち位置が絶妙。

　これ、何だか馴染みがある感覚だと思っていたら、こう書いてありました。

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　その性ユートピアの詳細さと奇抜さは、強いていうなら、UFOや金星人や火星人の存在を信じたアダムスキー一派とも似ているかも知れません。しかし世界観の細かさと面白さは、UFO教典をもしのぐものだと、太鼓判を押せます。
（文庫版p.16）
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　スパムメールは「UFO教典」に匹敵する存在だったのです！

　さあ貴方も、スパムメールに書いてあることを全て信じて疑わない「スパムビリーバー」を目指して精進してみませんか。（結果については一切責任を負いません）

　他にもタイトル通り「スパム大賞」の認定あり、爆笑スパムメールタイトル傑作選あり、スパムメールに返信したらどうなるかの実験結果報告あり、下世話ながら確実に笑えます。

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