『犬身』(松浦理英子) [読書(小説・詩)]
シリーズ“笙野頼子を起点に読む!”第4回
笙野頼子さんの作品を起点に読書の幅を広げるシリーズ。今回は、笙野頼子さんと共著で対談集『おカルトお毒味定食』を出した松浦理英子さんが、昨年出版した作品を読んでみました。それが『犬身』です。
いきなり余談ですが、『ぐるぐるポンちゃん』(池沢理美)という少女漫画があって、私は好きだったのですが、これは犬が人間に変身して飼い主の恋人になろうとする話です。読んだときは、何でまた人間になろうとするのか、色々と面倒ではないか、犬のままである方が純粋に愛されるだろうに、と思ったものです。
『犬身』の設定はちょうどこの逆で、「あの人の犬になりたい。飼い犬としてひたむきに愛し愛されたい」と願うあまり、犬に変身する女性が主人公です。
全編に渡って、犬になった主人公とその飼い主の愛情と心の交流が書かれ、そのひたむきで犬身的な、じゃなかった献身的な姿に心打たれます。
しかし何と言っても本書の凄さは、セックスがらみ一切抜きの官能シーン(頭や顎をなぜたり、手や頬をなめたり、ないたり、もたれたり、等々)にあります。これは純愛小説ならぬ純官能小説と言ってよいかと。
別に犬が好きでもない私でも深い感動を覚えたので、犬好きが読んだらもう失禁しちゃうんじゃないでしょうか。
犬と飼い主の情愛の美しさと対比するかのように、嫌悪感いっぱいに描写される人間同士のセックスシーン。作者の意地悪さ、というか悪意が込められているようです。
ストーリー展開には陰惨な部分もありますが、全てが犬の視点から書かれることと、あと文章から立ち上る絶妙なユーモア感覚のおかげで、最初から最後まで楽しく読むことが出来ました。ラストが近づくにつれて、いったい最後はどう終わるつもりなのか、もう本当にどきどきしてきたり。
本書は、松浦理英子さんの7年ぶりの新作ということで出版自体がニュース扱いとなり、あちこちの書評で取り上げられ、ついには「2007年のベスト」とまでささやかれる高評価を受けましたが、それも充分に納得できる傑作です。
笙野頼子さんの作品を起点に読書の幅を広げるシリーズ。今回は、笙野頼子さんと共著で対談集『おカルトお毒味定食』を出した松浦理英子さんが、昨年出版した作品を読んでみました。それが『犬身』です。
いきなり余談ですが、『ぐるぐるポンちゃん』(池沢理美)という少女漫画があって、私は好きだったのですが、これは犬が人間に変身して飼い主の恋人になろうとする話です。読んだときは、何でまた人間になろうとするのか、色々と面倒ではないか、犬のままである方が純粋に愛されるだろうに、と思ったものです。
『犬身』の設定はちょうどこの逆で、「あの人の犬になりたい。飼い犬としてひたむきに愛し愛されたい」と願うあまり、犬に変身する女性が主人公です。
全編に渡って、犬になった主人公とその飼い主の愛情と心の交流が書かれ、そのひたむきで犬身的な、じゃなかった献身的な姿に心打たれます。
しかし何と言っても本書の凄さは、セックスがらみ一切抜きの官能シーン(頭や顎をなぜたり、手や頬をなめたり、ないたり、もたれたり、等々)にあります。これは純愛小説ならぬ純官能小説と言ってよいかと。
別に犬が好きでもない私でも深い感動を覚えたので、犬好きが読んだらもう失禁しちゃうんじゃないでしょうか。
犬と飼い主の情愛の美しさと対比するかのように、嫌悪感いっぱいに描写される人間同士のセックスシーン。作者の意地悪さ、というか悪意が込められているようです。
ストーリー展開には陰惨な部分もありますが、全てが犬の視点から書かれることと、あと文章から立ち上る絶妙なユーモア感覚のおかげで、最初から最後まで楽しく読むことが出来ました。ラストが近づくにつれて、いったい最後はどう終わるつもりなのか、もう本当にどきどきしてきたり。
本書は、松浦理英子さんの7年ぶりの新作ということで出版自体がニュース扱いとなり、あちこちの書評で取り上げられ、ついには「2007年のベスト」とまでささやかれる高評価を受けましたが、それも充分に納得できる傑作です。
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