『できたての地球 生命誕生の条件』(廣瀬敬) [読書(サイエンス)]
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これまでの生命の起源に関する研究には、初期地球の特殊な環境が十分考慮されていませんでした。初期地球環境を考える、たとえば環境中に用意された岩石や鉱物の触媒作用の解明にブレイクスルーがあるだろうと信じています。地球の起源や初期地球環境に関する研究も同じです。地質学でさかのぼれない初期の地球はこれまで想像の域を出ませんでした。しかし、生命の誕生を可能とした条件を考慮することにより、その具体像に迫ることができると考えているのです。
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単行本p.113
できたての地球、つまり初期地球の環境はどのようなものだったのか。そして生命はどうやって誕生したのか。この二つの難問を合わせて研究することによりブレイクスルーを目指す地球生命研究所の研究活動を、一般向けに紹介してくれる一冊。単行本(岩波書店)出版は2015年5月、Kindle版配信は2017年9月です。
生命がどのようにして誕生したのかを考えることは、それが可能になるような環境とはどのようなものかを考えること。「生命の誕生」という条件から初期地球の環境を推測し、検証する。東京工業大学地球生命研究所で行われている研究テーマを中心に、初期地球と生命誕生との関係を探る本です。全体は5つの章から構成されています。
「1 四六億年前に何が起きたのか」
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このように、地球がいま1AUのところにあるからといって、できたときに1AUだったかどうかはわからないのです。そう断言することが、太陽系外惑星が見つかって修正を図られている、理論の見直しが迫られています。かたや中心星に飲み込まれないようにするためには、回転の各運動量を失わせないようにするのが必須ですが、それをどう理論的に説明するか、いま研究の最中にあります。
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単行本p.11
地球の年齢は46億歳。しかし、その根拠は何だろうか。地球が誕生するまでの過程を探ります。
「2 地球の水はどこから来たのか」
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スノーラインの外側から飛ばされて来た小惑星はたっぷりの氷を含んでいたはずです。それが地球に取り込まれることで、地球の水成分になった、すなわち水は小惑星帯からもたらされたというのが多くの研究者の考えていることです。(中略)多くの水がマグマに溶け込んだおかげで、なんと地球の内部には、現在の海洋の何十倍もの水(正確にいえば、その成分である水素も含めた量)が含まれているようです。
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単行本p.17
太陽からの距離2.7AUに位置する境界線、スノーライン。このラインの内側では、氷は生成されないことが明らかになっている。つまり、出来たばかりの地球には水はほとんど存在しなかった。では、生命誕生に不可欠な水は、いったいどこからやってきたのだろうか。地球を満たす水の起源に迫ります。
「3 地球コアが地球の起源を解くカギ」
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地球にあとから運ばれてきたのは、水だけではありません。生命の起源との関係でいえば、炭素や窒素が重要です。スノーラインの向こうで、水蒸気が氷として凝縮したように、炭素も有機物として、また窒素もアンモニア氷などとして小惑星に取り込まれたと考えられます。できたての地球には、水のみならず、炭素や窒素ももたらされたはずです。
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単行本p.64
生命を支える物質である炭素や窒素は、いつどのようにして地球にもたらされたのか。それらは、地球内部を含め、どのように取り込まれたのか。生命誕生の前提となる物質的環境がどのようにして出来上がっていったのかを探ります。
「4 生命が生まれる場とはなにか」
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なにも証拠らしい証拠が残っていない初期地球でどんな代謝をしていたのかを考えるのは容易ではありません。しかし、地球生命研究所でいま取り組んでいるのは、代謝のなかでも、生化学で解糖系といわれるクエン酸回路の逆回しのようなものです。
(中略)
なぜクエン酸回路の逆回しに注目しているかというと、面白いことに、その途中途中でできてくる産物が、生命に必須のパーツになるためです。たとえば脂質や、アミノ酸、ヌクレオチドなどの前駆物質ができてきます。(中略)つまり、このクエン酸回路の逆回しが、できて間もない地球上に反応システムとして存在していれば、生体必須分子をどんどん作ってくれるので、生命の誕生にはとても都合がいいのです。
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単行本p.76
最初の生命はどのような場所、どのような環境で誕生したのか。初期地球の環境を使って機能する「生命の部品となる物質を持続的に供給する化学反応システム」という、生命誕生の前段階となる代謝を探る研究を紹介します。
「5 生命誕生の条件と初期地球」
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これまで話してきたように、現在の地球にはほとんど証拠が残っていないと思われる初期地球のイメージが、少しずつ明らかになってきました。わたしたちは、地質学や惑星科学の観点だけでなく、地球に生命が誕生したという事実を踏まえて、そのためには、どういう初期地球でなければならなかったかという観点で考えようとしています。地球の起源を考慮して生命の起源を考える、また逆に、生命の誕生を可能にする地球の起源を考える、これこそ地球生命研究所の目指すところです。
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単行本p.104
誕生から進化まで地球環境によってコントロールされてきた生命。逆に生命活動により影響を受けてきた地球環境。そのような相互作用の理解を目指す研究の最前線を紹介します。
これまでの生命の起源に関する研究には、初期地球の特殊な環境が十分考慮されていませんでした。初期地球環境を考える、たとえば環境中に用意された岩石や鉱物の触媒作用の解明にブレイクスルーがあるだろうと信じています。地球の起源や初期地球環境に関する研究も同じです。地質学でさかのぼれない初期の地球はこれまで想像の域を出ませんでした。しかし、生命の誕生を可能とした条件を考慮することにより、その具体像に迫ることができると考えているのです。
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単行本p.113
できたての地球、つまり初期地球の環境はどのようなものだったのか。そして生命はどうやって誕生したのか。この二つの難問を合わせて研究することによりブレイクスルーを目指す地球生命研究所の研究活動を、一般向けに紹介してくれる一冊。単行本(岩波書店)出版は2015年5月、Kindle版配信は2017年9月です。
生命がどのようにして誕生したのかを考えることは、それが可能になるような環境とはどのようなものかを考えること。「生命の誕生」という条件から初期地球の環境を推測し、検証する。東京工業大学地球生命研究所で行われている研究テーマを中心に、初期地球と生命誕生との関係を探る本です。全体は5つの章から構成されています。
「1 四六億年前に何が起きたのか」
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このように、地球がいま1AUのところにあるからといって、できたときに1AUだったかどうかはわからないのです。そう断言することが、太陽系外惑星が見つかって修正を図られている、理論の見直しが迫られています。かたや中心星に飲み込まれないようにするためには、回転の各運動量を失わせないようにするのが必須ですが、それをどう理論的に説明するか、いま研究の最中にあります。
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単行本p.11
地球の年齢は46億歳。しかし、その根拠は何だろうか。地球が誕生するまでの過程を探ります。
「2 地球の水はどこから来たのか」
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スノーラインの外側から飛ばされて来た小惑星はたっぷりの氷を含んでいたはずです。それが地球に取り込まれることで、地球の水成分になった、すなわち水は小惑星帯からもたらされたというのが多くの研究者の考えていることです。(中略)多くの水がマグマに溶け込んだおかげで、なんと地球の内部には、現在の海洋の何十倍もの水(正確にいえば、その成分である水素も含めた量)が含まれているようです。
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単行本p.17
太陽からの距離2.7AUに位置する境界線、スノーライン。このラインの内側では、氷は生成されないことが明らかになっている。つまり、出来たばかりの地球には水はほとんど存在しなかった。では、生命誕生に不可欠な水は、いったいどこからやってきたのだろうか。地球を満たす水の起源に迫ります。
「3 地球コアが地球の起源を解くカギ」
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地球にあとから運ばれてきたのは、水だけではありません。生命の起源との関係でいえば、炭素や窒素が重要です。スノーラインの向こうで、水蒸気が氷として凝縮したように、炭素も有機物として、また窒素もアンモニア氷などとして小惑星に取り込まれたと考えられます。できたての地球には、水のみならず、炭素や窒素ももたらされたはずです。
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単行本p.64
生命を支える物質である炭素や窒素は、いつどのようにして地球にもたらされたのか。それらは、地球内部を含め、どのように取り込まれたのか。生命誕生の前提となる物質的環境がどのようにして出来上がっていったのかを探ります。
「4 生命が生まれる場とはなにか」
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なにも証拠らしい証拠が残っていない初期地球でどんな代謝をしていたのかを考えるのは容易ではありません。しかし、地球生命研究所でいま取り組んでいるのは、代謝のなかでも、生化学で解糖系といわれるクエン酸回路の逆回しのようなものです。
(中略)
なぜクエン酸回路の逆回しに注目しているかというと、面白いことに、その途中途中でできてくる産物が、生命に必須のパーツになるためです。たとえば脂質や、アミノ酸、ヌクレオチドなどの前駆物質ができてきます。(中略)つまり、このクエン酸回路の逆回しが、できて間もない地球上に反応システムとして存在していれば、生体必須分子をどんどん作ってくれるので、生命の誕生にはとても都合がいいのです。
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単行本p.76
最初の生命はどのような場所、どのような環境で誕生したのか。初期地球の環境を使って機能する「生命の部品となる物質を持続的に供給する化学反応システム」という、生命誕生の前段階となる代謝を探る研究を紹介します。
「5 生命誕生の条件と初期地球」
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これまで話してきたように、現在の地球にはほとんど証拠が残っていないと思われる初期地球のイメージが、少しずつ明らかになってきました。わたしたちは、地質学や惑星科学の観点だけでなく、地球に生命が誕生したという事実を踏まえて、そのためには、どういう初期地球でなければならなかったかという観点で考えようとしています。地球の起源を考慮して生命の起源を考える、また逆に、生命の誕生を可能にする地球の起源を考える、これこそ地球生命研究所の目指すところです。
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単行本p.104
誕生から進化まで地球環境によってコントロールされてきた生命。逆に生命活動により影響を受けてきた地球環境。そのような相互作用の理解を目指す研究の最前線を紹介します。
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