『Down Beat 23号』(柴田千晶、小川三郎、他) [読書(同人誌)]
詩誌『Down Beat』の23号を紹介いたします。
[Down Beat 23号 目次]
――――――――――――――――――――――――――――
『夕ごはん』(谷口鳥子)
『浅草の紙漉き屋』『丸八』(廿楽順治)
『容の変貌』(徳広康代)
『猿轡』(中島悦子)
『くせ』(今鹿仙)
『富士見町』『日常のバランス』(小川三郎)
『川と森にはさまれた場所』『魚たちとの会話』(金井雄二)
『家魂 scece20』(柴田千晶)
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お問い合わせは、次のフェイスブックページまで。
詩誌Down Beat
https://www.facebook.com/DBPoets
――――
おつかいを頼んだのは誰だったか。そのひとの顔はぼんやりとしていて、いくら目をこらしても眉から頬のあたりが滲んでいてわからない。
「丸八には、
目が覚めてからでないとあなたは行かれない」
その声だけがはっきりしている。
――――
『丸八』(廿楽順治)より
――――
九月を認識できないのは
人間のふへん的なくせである
右を向く裸婦から次のページへ
とは去りがたく
いつまでも行ったり来たりしている
「こんな小国のために」といいながら
全員が何かを失おうとしている
――――
『くせ』(今鹿仙)より
――――
身体のバランスを保つ。
それだけのために
日々を費やす。
身体は大きく傾いて
重心もかなりずれている。
地面も平らではない。
それでもこうして倒れないまま
日常を過ごしているのは不思議だ。
時折責任を取らされる。
強く罵倒される。
親しかった人が離れていく。
それでも倒れないでいるのは不思議だ。
――――
『日常のバランス』(小川三郎)より全文引用
[Down Beat 23号 目次]
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『夕ごはん』(谷口鳥子)
『浅草の紙漉き屋』『丸八』(廿楽順治)
『容の変貌』(徳広康代)
『猿轡』(中島悦子)
『くせ』(今鹿仙)
『富士見町』『日常のバランス』(小川三郎)
『川と森にはさまれた場所』『魚たちとの会話』(金井雄二)
『家魂 scece20』(柴田千晶)
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おつかいを頼んだのは誰だったか。そのひとの顔はぼんやりとしていて、いくら目をこらしても眉から頬のあたりが滲んでいてわからない。
「丸八には、
目が覚めてからでないとあなたは行かれない」
その声だけがはっきりしている。
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『丸八』(廿楽順治)より
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九月を認識できないのは
人間のふへん的なくせである
右を向く裸婦から次のページへ
とは去りがたく
いつまでも行ったり来たりしている
「こんな小国のために」といいながら
全員が何かを失おうとしている
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『くせ』(今鹿仙)より
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身体のバランスを保つ。
それだけのために
日々を費やす。
身体は大きく傾いて
重心もかなりずれている。
地面も平らではない。
それでもこうして倒れないまま
日常を過ごしているのは不思議だ。
時折責任を取らされる。
強く罵倒される。
親しかった人が離れていく。
それでも倒れないでいるのは不思議だ。
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『日常のバランス』(小川三郎)より全文引用
『変身』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]
2024年8月21日は、夫婦でKARAS APPARATUSに行って勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんのダンス公演を鑑賞しました。アップデイトダンスNo.105『変身』、カフカの同名小説を原作とする作品です。
あるとき目覚めると虫になっていた男。有名なカフカの原作をダンスで表現してゆきます。身体の輪郭がぼんやり見えるか見えないか、という薄暗がりのなかで、勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが暗闇にうごめく虫を踊ります。たぶん勅使川原さんが成虫、佐東さんが幼虫。
いつもながら照明効果がすごい。薄暗がりに様々な幻視が現れて、自分がいま何を見ているのかどんどん把握できなくなってゆきます。壁面への投影(影)や音響(壁を叩く音)も効果的に使われており、全体の雰囲気はホラー映画。家族や社会とのつながりが絶たれてしまう哀しみと、奇妙な解放感が、とても印象的です。この二人が「感情も自我もあるのにヒトではないヒトとして扱われない存在」を踊ると、いつも胸に苦しいものが宿るのです。
あるとき目覚めると虫になっていた男。有名なカフカの原作をダンスで表現してゆきます。身体の輪郭がぼんやり見えるか見えないか、という薄暗がりのなかで、勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが暗闇にうごめく虫を踊ります。たぶん勅使川原さんが成虫、佐東さんが幼虫。
いつもながら照明効果がすごい。薄暗がりに様々な幻視が現れて、自分がいま何を見ているのかどんどん把握できなくなってゆきます。壁面への投影(影)や音響(壁を叩く音)も効果的に使われており、全体の雰囲気はホラー映画。家族や社会とのつながりが絶たれてしまう哀しみと、奇妙な解放感が、とても印象的です。この二人が「感情も自我もあるのにヒトではないヒトとして扱われない存在」を踊ると、いつも胸に苦しいものが宿るのです。
タグ:勅使川原三郎