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『もつれる水滴』(ヨルグ・ミュラー、束芋) [ダンス]

 2022年5月4日は、夫婦で東京芸術劇場に行って、ヨルグ・ミュラーと束芋が共同制作した公演を鑑賞しました。ヨルグ・ミュラーによる布を使ったジャグリングに、束芋の不思議なアニメーションが投影される75分の舞台です。


[キャスト他]

構成・演出: ヨルグ・ミュラー、束芋
出演: ヨルグ・ミュラー、間宮千晴
美術: 束芋


 フランスを拠点とする現代サーカスアーティストのヨルグ・ミュラーが挑むのは、巨大な白い布を空中で自在に動かすジャグリング。布の四隅にワイヤーをつなぎ、床と天井に取り付けた滑車を経由してそれらを自分の手にむすびつける。ヨルグが歩いたり腕を動かしたりするとワイヤーが引っ張られ、布が動きます。ワイヤーはよく見えないので、まるで布が自分の意志で飛び上がったり、空中で広がったり、クラゲのようにたゆたい、ヨルグの動きに合わせるように踊ったり。

 オブジェクトに対する身体からのアプローチという、いわゆるジャグリングで、視覚的にも布が「踊る」様はとても印象的です。またタイミングや順番や方向をちょっと間違うとワイヤーがからんで悲惨なことになるのではないか、というジャグリングらしいハラハラ緊張感も。

 やがてヨルグはジャグリングで使った布を幽霊のようにかぶり、また舞台上には切れ目のある大きな布によるスクリーンが下りてきます。そこに束芋さんのアニメーションが投影されるわけです。個人的に束芋さんの作品はダンスとの共演である『錆からでた実』しか観たことがない(2013年初演版と2016年版)のですが、あの不思議で懐かしくちょっと恐いアニメーション(新作)がスクリーンに、そしてその前に立つヨルグにも投影され、しかもそれらが必ずしも同じ映像ではないので、遠近感を含め色々と感覚が混乱します。

 アニメーション投影に様々な工夫を加えており、画像投影されたヨルグ(の形をした布)がスクリーンの切れ目から向こうの世界に「入って」いったり、ヨルグを「解剖」して内臓を取り出して背景スクリーンに移動させたりと、驚きがあります。

 後半になると画像投影とダンスのコラボレーションになりますが、ここは『錆からでた実』と比べて印象が薄く、コラボレーションの効果が必ずしもうまく発揮されていないように感じられました。




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