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『図解・天気予報入門 ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか』(古川武彦、大木勇人) [読書(サイエンス)]

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 現代の気象予報の中核をなすのはコンピュータによる数値予報です。使用されるコンピュータには、前編で解説してきたような季節ごとの天気図やそれによって起こりやすい天気のパターンなどがプログラムされているのではありません。また、低気圧や台風のモデル、前線の種類による天気の特徴などがプログラムされているのでもありません。(中略)現在の数値予報は、物理学の教科書に載っている基本的な物理法則と大気の状態にかかわる「数値」だけをもとにして、将来の大気の状態を数値としてはじき出そうとする手法です。
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単行本p.184、185

 長年培われた知識と経験を持った気象予報士が、天気図を見ながら経験とカンも活かして天気を予測する……。かつての気象予報のスタイルは、今ではコンピュータによる数値予報に代わっている。数値予報とは何か。それは信用できるものなのだろうか。従来の方法から最新の研究まで、気象予報の技術をまとめて紹介してくれる本。単行本(講談社)出版は2021年9月です。


〈目次〉

前編 人による予報の時代――観測、気象の理解から予報へ

第1章 温暖化で強靭化する「台風」、多発する「線状降水帯」
第2章 気象台も気象レーダーもないころの気象災害
第3章 現在の大気を知る――さまざまな気象観測
第4章 天気図と人による天気予報

後編 コンピュータによる予報の時代へ――数値予報とはなにか

第5章 大気をシミュレートする数値予報
第6章 数値予報を翻訳するガイダンス
第7章 天気予報のこれから




前編 人による予報の時代――観測、気象の理解から予報へ
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 数値予報が始まる以前から、「天気図」を作成するデータを得るために観測は不可欠でした。気圧を観測し、高気圧や低気圧の配置(気圧配置)を天気図に表すことにより、気象状況を概念としてとらえられます。天気図は、日本の気象台の始まりとともに作成され続け、気象状況を表す重要な資料となり、予報を行ったり、起こった気象を解釈する際に非常に重要な役割を担ってきました。
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単行本p.83

 まずは、気象に関する基礎知識と、従来から広く行われてきた気象予報の技術について解説します。巨大台風や線状降水帯など昨今の大きな課題となっている気象現象についても知識を深めます。




第5章 大気をシミュレートする数値予報
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 実際の数値予報は、格子点における数値だけで大気をシミュレートするのです。
 さて、ここまでの解説を経て、いろいろな疑問が湧き起こったのではないでしょうか? 例えば、

「すべての格子点で観測値があるのだろうか? そんなに細かく観測していないのではないか?」
「具体的にどんな物理法則が使われるのか?」
「計算するというが、どんな計算なのか?」
「20kmより小さなスケールの雲の影響は考慮されているのだろうか?」
「海か陸かの違い、地形の違いなどが考慮されるのだろうか? 森林地帯と砂漠地帯での違いは?」
「GPVの気圧、風、気温、湿度などだけで、本当に地球大気を表現できるのだろうか?」
「GPVが得られたとして、それで天気を予報できているのか?」

など……、疑問に感じて当然です。これから疑問を解いていきましょう。
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単行本p.190

 地球の大気全体を例えば20km×20kmの格子に分けて、それぞれの格子内の気温や気圧などの数値データ=GPVを割り当て、あとは物理の基本法則だけでGPVが時間と共にどのように変化するかを計算する……。本当にそんな単純な方法で実用的な気象予報が出せるものなのだろうか?
 全球大気モデルを元にしたスーパーコンピュータによる数値計算がどのように行われ、それで気象予報が可能となる仕組みについて解説します。




第6章 数値予報を翻訳するガイダンス
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 天気予報は人の生活の単位となる地域ごとに出される必要がありますが、格子点値は機械的に計算しやすくするために決めた点における値なので、いわば機械の言葉を人の言葉に「翻訳」するのがガイダンスであるともいえます。また、これによって、数値予報モデルで表現できない細かな地形などの影響によって系統的に生じる誤差などの補正も行うことができます。ガイダンスは「予報支援資料」あるいは「予報翻訳資料」とも呼ばれて、予報者にとっては一種の「虎の巻」のようなものです。
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単行本p.232

 大気を格子に区切って、それぞれの格子点における将来の気温や気圧などのデータが計算できたとしても、それがすなわち気象予報とはいえない。大量に並んだ数値の山を、何らかの方法で人間が理解しやすい天気図や天気予報チャートに「翻訳」する必要となる。そのために使われる「ガイダンス」について解説します。




第7章 天気予報のこれから
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 これらの先進的な数値予報モデルと次世代のスーパーコンピュータを用いた研究は、地球温暖化のシミュレーションに用いられると同時に、雲と降水のしくみに関する研究にも活用されています。より精密になった観測機器と高性能コンピュータを活用し、台風や線状降水帯の発生を全球雲解像モデルやその次世代モデルを用いて、積乱雲スケールの数値予報が実現できる日がくるかもしれません。その実現があってこそ、強靱化した台風による集中豪雨、活発化した前線、多発する線状降水帯による集中豪雨のより正確な予報ができる、次世代の天気予報が実現するでしょう。
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単行本p.271

 気象現象に本質的に含まれているカオス挙動の影響を抑えるために開発されたアンサンブル予報の技術、必要な空間スケールに合わせた階層的な数値予報モデルの採用、局地的豪雨など局所的気象の予報に向けた手法、より高性能な観測技術など、気象予報の精度と実用性を高めるために行われている様々な取り組みを解説します。





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