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『リバー・ワールド』(川合大祐) [読書(小説・詩)]

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ただの句じゃねえか脚立はただの句じゃ
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あばばばばバカSFに母音あり
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寺のうえUFO群れたあとに闇
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明晰夢世界各地に生卵
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手鏡が雑に割られる本能寺
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魔女走るめざすは鹿の後頭部
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孤独死のたびたび起こる相撲部屋
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トマト屋がトマトを売っている 泣けよ
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 てっきりフィリップ・ホセ・ファーマーかと思ったら「川柳」の英訳。言葉と言葉のとてつもない落差が生む衝撃と脱力の第二句集。単行本(書肆侃侃房)出版は2021年4月です。


 まずは前作の紹介から。

2018年08月07日の日記
『スロー・リバー』(川合大祐)
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2018-08-07



 そしてますます勢力を増して今夜半過ぎに関東甲信越地方に上陸の恐れがあるパワフルな作品を見てほしい。


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ただの句じゃねえか脚立はただの句じゃ
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あばばばばバカSFに母音あり
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魂が切断されたバとカボン
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狂ったかコロッケそばのケを写す
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以下略の(以下を略したので)うどん
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作中句〈の作中句の〉作中句
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(深槽の(心理の中の(志村の)))し
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邦画の魔田田田田口田田日田田田
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誤字さえ無かった
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「山本リンダ」
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今そこでこの川柳は終わりです。
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 続いて個人的趣味でオカルトネタ作品を。


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無理のない範囲でおまえ落武者に
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寺のうえUFO群れたあとに闇
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異人論くるしい時の雪男
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宿題が終わってしまうナスカの絵
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古池のぜんぶと共にムー沈む
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無をおそれつつ学研に出す葉書
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コーラ振る偽史専門の書店にて
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明晰夢世界各地に生卵
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 SFっぽい単語と日常的単語の出会いが生む脱力感も強力です。


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少年にメロンを渡す地底基地
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河豚売りへ秘密基地でのラリアート
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ふたり降り空中都市が二ミリ浮く
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宇宙軍司令の家の木彫り熊
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蠅を追う軌道エレベーターあけて
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月基地の通信室で蠅死ねり
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紳士服冥王星の避難所に
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鳥そぼろ銀河支店にばらまかれ
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航宙士日記にずっとそぼろ丼
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菜温しワープ航法したあとも
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プリン消えひとりとひとり深宇宙
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地球圏ほろびたあとのえかきうた
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 声に出して読むと愛と勇気と感動とそうでもないものが湧いてくる傑作の数々。


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男たち永谷園へ続く道
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ゲーセンに天動説の巫女ばかり
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手鏡が雑に割られる本能寺
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魔女走るめざすは鹿の後頭部
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孤独死のたびたび起こる相撲部屋
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トマト屋がトマトを売っている 泣けよ
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白樺派バールのようなもの床に
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覆るビデオ判定村祭り
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金網にずっと電気のある暮らし
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現場にはスーパーボール跳ねており
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想像の限界値まで人を埋め
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ひどい恋移動手段が三輪車
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消火器で殴られている春寒し
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守るべき姫がふやしてゆくゾンビ
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ハンバーグ多発地帯の土佐暮れる
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