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『連星からみた宇宙 超新星からブラックホール、重力波まで』(鳴沢真也) [読書(サイエンス)]

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 じつは、宇宙に存在する星々のおよそ半数は、連星であると考えられています。しかし私たちにとってもっとも身近な恒星である太陽が1つだけなので、多くの人は、恒星はみな一人ぼっちで存在していると思っているようです。「ブルーバックス」の編集部のみなさんでさえ、恒星の半数は連星だと知らない人が少なくなかったと聞いて、ちょっとびっくりしました。連星は宇宙で珍しいものではなく、むしろありふれた存在なのです。
 しかも、ただ「珍しくない」だけではありません。じつは天文学の進歩において、連星は非常に重要な役割を担ってきたのです。
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単行本p.5


 共通重心を中心に互いの周囲を公転している複数の恒星、連星。新星、ブラックホール、Ia型超新星、ダークエネルギー、重力波など、様々な発見に連星がどのように関わっていたのかを平易に解説する天文学入門書。単行本(講談社)出版は2020年12月です。


 宇宙や天体に関するサイエンス本で名高い鳴沢真也さんによる最新作です。これまでに読んだことのある鳴沢さんの著書の紹介はこちら。


2016年07月27日の日記
『へんな星たち 天体物理学が挑んだ10の恒星』(鳴沢真也)
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2016-07-27

2014年02月25日の日記
『宇宙人の探し方 地球外知的生命探査の科学とロマン』(鳴沢真也)
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2014-02-25


 今作のテーマは「連星」。連星に関する基礎知識から始まって、天文学の歴史における様々な大発見に連星がどのように関わっていたのかを紹介してくれます。


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 天文学や宇宙論に大発見をもたらし、その発展を支えているのは、連星だといっても過言ではないでしょう。さらに、星が見せる不思議な特徴や、説明のつかない奇妙な現象について調べていくと、連星があることが原因だったという事例は、まさに枚挙にいとまがありません。「宇宙の謎解き」は、連星を知らなければ絶対にできないのです。
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単行本p.6


〔目次〕

第1章 あれも連星、これも連星
第2章 連星はどのようにしてできたのか
第3章 なぜ連星だとわかるのか
第4章 連星が教える「星のプロフィール」
第5章 「新しい星」は連星が生む幻か
第6章 ブラックホールは連星が「発見」した
第7章 連星が暗示する「謎のエネルギー」
第8章 連星が解いた「天才科学者最後の宿題」
第9章 連星のユニークな素顔
第10章 連星も惑星を持つのか
第11章 連星は元素の合成工場だった
第12章 もしも連星がなかったら 




第1章 あれも連星、これも連星
第2章 連星はどのようにしてできたのか
第3章 なぜ連星だとわかるのか
第4章 連星が教える「星のプロフィール」
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 人間の場合、双子が生まれる確率は約1%といわれています。しかし、星は人間よりも双子で生まれる確率が圧倒的に高いと考えられています。
 その双子が連星になると考えられていますが、双子ではなく「他人」が連星になる場合もあります。さらに、最初は連星だったのに、あとでペアが解消される場合や、連星のペアをチェンジしてしまう場合すらあるのです。星の世界の人間関係(星関係?)も、なかなか複雑なのです。
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単行本p.42

 連星とはどのような構造をしているのか。現時点でわかっている最多の多重連星は何重連星か。連星はどのようにして誕生するのか。ある恒星系が連星であることをどうやって確認するのか。そして連星の観測により何が分かるのか。連星に関する基礎知識を解説します。


第5章 「新しい星」は連星が生む幻か
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 新星の正体はなんなのでしょうか。一見すると、夜空に新しい星が生まれて輝きだしたようにも思えます。しかし輝きは一時のことで、しだいに暗くなって見えなくなるのですから、星が誕生したわけではないのです。新星現象は長い間、天文学上の大きな謎であり、古いものでは1651年に出された論文に、13もの説が提唱されています。
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単行本p.104

 突然、夜空に輝く星が現れる新星(ノヴァ)現象。長年に渡って天文学上の謎だった新星の正体には、連星が深く関わっていたのです。


第6章 ブラックホールは連星が「発見」した
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 連星は、謎のX線源をつくり、通常なら私たちけっして姿を見せないブラックホールの姿を暴き出す役割を果たしていました。ブラックホールの発見は、ジャッコーニさん、ロッシさん、小田さんら「X線天文学」を切り拓いた人たちの功績によるものですが、同時に、連星がブラックホールを発見させたともいえるのです。
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単行本p.134

 光を放出せず発見困難と考えられていたブラックホールは、実際には強烈なX線を放出していた。そのメカニズムは。ブラックホールの発見に連星がどのように関わっていたのかを解説します。


第7章 連星が暗示する「謎のエネルギー」
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 超新星というと、非常に重い星が、一生の最後に大爆発する「重力崩壊型」が一般の方にはなじみがあるようですが、Ia型はそれとは別のタイプの超新星で、重力崩壊型とはまったく異なるメカニズムで発生すると考えられています。(中略)
 では、どのようなメカニズムで白色矮星が爆散するのでしょうか。じつは2つの説があり、ともに連星がからんでいるのですが、どちらが正しいのかは現在も大論争中です。
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単行本p.139

 標準光源として利用できるIa型超新星。連星が作り出すIa型超新星の観測が宇宙の加速膨張という衝撃的な発見、さらにはダークエネルギーの謎につながっていった経緯を解説します。


第8章 連星が解いた「天才科学者最後の宿題」
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 GW170817の検出と、そのときのキロノバ、ショートガンマ線バーストの検出は、重力波と電磁波による、それも広い波長域にわたっての観測という意味で、人類史上初めての快挙でした。理論で予測されていたいくつかの現象が、このとき一気に証明されたのです。
 アインシュタインの一般相対性理論の正しさや、これらの天体現象のメカニズムが解き明かされただけではありません。ブラックホールどうしの連星の場合と同じく、中性子星どうしの連星もたしかに存在すると立証されたことは、天文物理学でも、星の進化の研究などにおいてきわめて重要な意義がありました。物理学者にとっても、天文学者にとっても、それは一大イベントだったのです。こうしたわけで、中性子星どうしの合体が観測された2017年8月17日を私は「21世紀天体物理学の勝利の日」と呼んでいます。
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単行本p.169

 重力波と電磁波によるブラックホール連星や中性子星連星の観測は、これまでの理論を一気に裏付ける重要な成果をあげた。連星観測により宇宙の姿が明らかになってゆく様子を解説します。


第9章 連星のユニークな素顔
第10章 連星も惑星を持つのか
第11章 連星は元素の合成工場だった
第12章 もしも連星がなかったら 
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 結婚指輪に使われるプラチナ、有史以来人々を魅了し続ける金、原子力発電の燃料となるウラン、これらの元素は中性子星の連星が衝突・合体してつくられるのです。このことがわかってきたのは、じつはかなり最近のことです。
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単行本p.221

 様々な連星の様子、金やウランなどの元素の合成過程に連星がどのように関わっているのか、そして連星を周回する惑星の存在など、様々なトピックを解説します。





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