『モーアシビ 第40号』(白鳥信也:編集、小川三郎・北爪満喜・他) [読書(小説・詩)]
詩、エッセイ、翻訳小説などを掲載する文芸同人誌、『モーアシビ』第40号をご紹介いたします。
[モーアシビ 第40号 目次]
――――――――――――――――――――――――――――
詩
『夢』『雨の日』『ベンチ』(小川三郎)
『秋バラの近く』(北爪満喜)
『歩く』(森ミキエ)
『風の壁』(島野律子)
『のに、から、流星群』(森岡美喜)
『月光のカケラ』(月光浴/月と電線)(白鳥信也)
散文
『長崎外海…ド・ロ神父を追って』(サトミ セキ)
『伐採』(浅井拓也)
『十一月の憂鬱』(平井金司)
『一年前より幸せですか』(清水耕次)
『風船乗りの汗汗歌日記 その39』(大橋弘)
『昆虫食日常化元年によせて』(内山昭一)
翻訳
『幻想への挑戦 14』(ヴラジーミル・テンドリャコーフ/内山昭一:翻訳)
――――――――――――――――――――――――――――
お問い合わせは、編集発行人である白鳥信也さんまで。
白鳥信也
black.bird@nifty.com
――――
みんな私が
もう死んでいると言った。
みんな私のことを
ちゃんと理解していると言った。
私は服を脱いでしまいたい。
服をぜんぶ脱いでしまいたい。
ことしの夏
私はたくさん
笑いすらしたのだ。
――――
『ベンチ』(小川三郎)より
――――
リズムもなくあっけなく
枯れ葉が落ちつづける
ここへ
星の間から降り
いのちはみなそっと
透明な小さな足の指先から
地上の水にふれるのだ
霜月
わたしの足の指先が
地上の水にふれたのは何時と
聞きそびれ
もうしることはできないことを
あなたに話したいのかもしれない
――――
『秋バラの近く』(北爪満喜)より
――――
駅は憧れ 秘かに住んでみたい 間取りを描く 電車は遅延 改札口を黒い着衣で杖をつく群集がふさぐ 両手で杖をつき両足を何とか前へ出して歩く人もいる 黒衣と杖の老人たち 駆け付けた駅員が何事かと咎める 遅れて着く人を待っている 導かれて共に友人の弔いへ向かうのだ 線香の煙は昇天し一本の道になる 大空へ さまざまな杖がいっせいに舞い上がる
――――
『歩く』(森ミキエ)より
――――
いま、この電線は舞台かもしれない
長年の夢だった月の捕獲に成功して
あくまでも冷静に見えるけれど
電線は湧きたっているのだろうか
観客席の位置にいるのは私だけ
さっきの風は幕を開けるアクションだったのか
そうすると緞帳は払われた雲だ
月はじたばたせずに
静かに電線に引っかかっている
輝くような月光に二本の線
――――
『月と電線』(白鳥信也)より
[モーアシビ 第40号 目次]
――――――――――――――――――――――――――――
詩
『夢』『雨の日』『ベンチ』(小川三郎)
『秋バラの近く』(北爪満喜)
『歩く』(森ミキエ)
『風の壁』(島野律子)
『のに、から、流星群』(森岡美喜)
『月光のカケラ』(月光浴/月と電線)(白鳥信也)
散文
『長崎外海…ド・ロ神父を追って』(サトミ セキ)
『伐採』(浅井拓也)
『十一月の憂鬱』(平井金司)
『一年前より幸せですか』(清水耕次)
『風船乗りの汗汗歌日記 その39』(大橋弘)
『昆虫食日常化元年によせて』(内山昭一)
翻訳
『幻想への挑戦 14』(ヴラジーミル・テンドリャコーフ/内山昭一:翻訳)
――――――――――――――――――――――――――――
お問い合わせは、編集発行人である白鳥信也さんまで。
白鳥信也
black.bird@nifty.com
――――
みんな私が
もう死んでいると言った。
みんな私のことを
ちゃんと理解していると言った。
私は服を脱いでしまいたい。
服をぜんぶ脱いでしまいたい。
ことしの夏
私はたくさん
笑いすらしたのだ。
――――
『ベンチ』(小川三郎)より
――――
リズムもなくあっけなく
枯れ葉が落ちつづける
ここへ
星の間から降り
いのちはみなそっと
透明な小さな足の指先から
地上の水にふれるのだ
霜月
わたしの足の指先が
地上の水にふれたのは何時と
聞きそびれ
もうしることはできないことを
あなたに話したいのかもしれない
――――
『秋バラの近く』(北爪満喜)より
――――
駅は憧れ 秘かに住んでみたい 間取りを描く 電車は遅延 改札口を黒い着衣で杖をつく群集がふさぐ 両手で杖をつき両足を何とか前へ出して歩く人もいる 黒衣と杖の老人たち 駆け付けた駅員が何事かと咎める 遅れて着く人を待っている 導かれて共に友人の弔いへ向かうのだ 線香の煙は昇天し一本の道になる 大空へ さまざまな杖がいっせいに舞い上がる
――――
『歩く』(森ミキエ)より
――――
いま、この電線は舞台かもしれない
長年の夢だった月の捕獲に成功して
あくまでも冷静に見えるけれど
電線は湧きたっているのだろうか
観客席の位置にいるのは私だけ
さっきの風は幕を開けるアクションだったのか
そうすると緞帳は払われた雲だ
月はじたばたせずに
静かに電線に引っかかっている
輝くような月光に二本の線
――――
『月と電線』(白鳥信也)より