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『Down Beat 17号』(柴田千晶、小川三郎、他) [読書(小説・詩)]

 詩誌『Down Beat』の17号を紹介いたします。


[Down Beat 17号 目次]
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『Iクリニックのこと』(徳広康代)
『よどみ』(中島悦子)
『さかい』(今鹿仙)
『傘』『亀と大仏』(小川三郎)
『きっと見ていてくれる』(金井雄二)
『守宮』(柴田千晶)
『非常階段』『大蛸』(谷口鳥子)
『クリーニング店』『クリーニング店2』(廿楽順治)
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おろしたての真っ白いブラウスを着た
小さい私は
学校の水飲み場で
赤い絵の具をかけられた
わざとじゃない

固まったチューブを
その子は
絞りだそうとしていただけ 急に
おしりから赤い絵の具が飛び散った

私は血をあびた
だから罪じゃない
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『よどみ』(中島悦子)より


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ある日
傘がなくなっていた。

真っ青に晴れた日だった。
みんな気がついていたが
口にする者は誰もいなかった。

その日の夜
余所の国で争いがあり
大勢人が殺されたと
ニュースが短く伝えていた。

次の日
傘は傘立てに戻っていた。
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『傘』(小川三郎)より


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仏像もまた仏像で
つぶったふりして横目で見ている。
嘘をつくべき唇を
きゅっと結んで開かない。
ただ
また亀が見ているな!
と思っている。

こんなやりとりが
途切れるはずだった毎日を
繋げているのだと仏典は言う。
亀はその通りだと思っている。
仏像もそうだと思っている。
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『亀と大仏』(小川三郎)より


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夜、台所の蛍光灯をつけると、いつもの守宮が窓に来ていた。喉を
けろけろと動かして、小さな虫が寄って来るのをじっと待っている。
窓にはりついた四つの、いいえ後ろ足が一つ欠けているから三つの
手足が愛らしい。窓に映らない後ろ足は、ただ宙に浮いているだけ
なのか、それとも千切れてしまったのか。守宮の透きとおったお腹
に、二つの卵の影がある。守宮の眠る夜にも、異臭は広がり続けて
いる。
――――
『守宮』(柴田千晶)より





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