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『新しい手洗いのために』(TOLTA、河野聡子) [読書(小説・詩)]

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私たちはまだ、新型コロナウイルス感染症によって生まれた「新しい社会」に適応できていません。私たちTOLTAはこの状況のなかで、誰も否定しない本をつくりたいと思いました。(中略)『新しい手洗いのために』は、手を洗うという行為についての叙事詩です。
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 新型コロナ禍による新しい生活習慣「手洗い」を題材に、TOLTAによって構成された手洗い叙事詩。出版は2020年11月です。

 複数の人が作成した手洗いに関するテキストを、TOLTAの協同制作法で再構成して作られた詩集です。通販は以下のページから。さらに姉妹編のような詩集『閑散として、きょうの街はひときわあかるい』の通販ページへのリンクも置いておきます。この機会に両方お求めになることをお勧めします。この時代を記憶にとどめるために。


【詩集】新しい手洗いのために
https://tolta.stores.jp/items/5fa21844df515962ffc7f241


【詩集】閑散として、きょうの街はひときわあかるい
https://tolta.stores.jp/items/5ee17fd755fa0313eceabe86


目次

1. 手を洗うたびに指の数を数えること
2. 外国語の発音を練習するように指と指の間を丁寧に洗うこと
3. 手と手が重なり合うときのもっとも美しい形を記憶すること
4. せっけんの泡立つ音や水の流れる音によく耳をすますこと
5. 安全をたしかめ、落ち着いたら、もう一度最初から手洗いをしてよい
6. 洗うべきときに洗えなかった手をよく覚えておくこと
7. 洗うたびにあなたの手は別のものになる


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手は、細かいうずまき模様(指紋と言います)
がある方が裏側です
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手が丸まっているときは裏側から
ゆっくりと開いていきます

指の部分は特に関節が多く、無理に開くと痛みの原因となりますので、丁寧に扱いましょうね。
ここまでくれば準備は万端!

さあ、早速手を洗っていきましょう!
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神様に会う前に手を洗うのは

手についた汚れを落とすためではない。手を洗っている間、九九の中でもっとも苦手な段――あなたの場合それはきっと七の段だ――をゆっくり唱えること。決して急いではいけない。ひとつひとつの数を、実在するなんらかの事物の個数として――例えば十四匹のうさぎ、三十五個のあんぱん、四十九人の弟を――イメージしながら唱えること。

宇宙人ももちろん手を洗う
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人を殺したあとだと思って手を洗うこと。手洗いのライバルといえば絆創膏だ。「手を清潔にする」「傷口を保護する」という高尚な目的をそれぞれが有し、絆創膏が剥がされるのか、そのまま手が洗われるのかという選択を迫られるために

常に緊迫した関係性を保っている
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今日も猫がかわいい。猫のおててはかわいい。猫が生後五ヶ月で、家にやってきたころ、成長の過程で手足が身体に比べて大きく、ふくふくしており、毎日「おててかわいいね」と話しかけていた。そんなおててであるが、ろくに洗ったことがないことに気づいた。試しに湿らせたティッシュをおててに近づけてみると、結構本気で逃げたので、無理に後追いはしないでおいた。いつもは猫自らが舐めておててをきれいにしているようだが、

家じゅうを歩き回ったあとの手を舐めて
果たして大丈夫なのだろうか?
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タグ:河野聡子
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