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『銀河鉄道の夜』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]

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 下流の方の川はばいっぱい銀河が巨きく写って、まるで水のないそのままのそらのように見えました。
 ジョバンニは、そのカムパネルラはもうあの銀河のはずれにしかいないというような気がしてしかたなかったのです。
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『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)より


 2020年9月21日は、夫婦でシアターχに行って勅使川原三郎さんの公演を鑑賞しました。勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが踊る上演時間70分ほどの作品です。

 背景には星空が投影され、舞台手前の観客に近い側にはガラスを敷きつめて作られた天の川、舞台右手には椅子を並べて列車の座席が作られています。佐東利穂子さんによる『銀河鉄道の夜』の朗読が流れる中、勅使川原三郎さんがジョバンニ、佐東利穂子さんがカムパネルラを踊ります。KARASのダンサーたちがその他の乗客として出演しています。

 原作の朗読を背景にその場面を踊る、というストレートな場面が続きます。勅使川原さんが幼い子供に見えるのがすごい。今回は演劇風の演出だなあと思っていると、原作のラストで終わらず、そこからギアが上がるという仕掛け。上演時間が一時間を超過している理由がこれでした。

 朗読が終わって静寂が続くなか、まず勅使川原三郎さんがソロを踊ります。悲しい寂しいという気持ちが盛り上がったところで佐東利穂子さんが再登場して二人で踊るわけです。物語としてきちんと閉じた原作をもう一度ひらくような、生死を超越するこのデュエットが素晴らしい。ダンスでしか表現できないものが激烈な感動を生みます。





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