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『モーアシビ 第39号』(白鳥信也:編集、小川三郎・他) [読書(小説・詩)]

 詩、エッセイ、翻訳小説などを掲載する文芸同人誌、『モーアシビ』第39号をご紹介いたします。


[モーアシビ 第39号 目次]
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 『校庭再生』(森ミキエ)
 『燃え殻の空』(島野律子)
 『日々のゆびさき 2020/06』(北爪満喜)
 『バス』(小川三郎)
 『第三形態』(森岡美喜)
 『荒野の品川駅』(白鳥信也)

散文

 『リトアニアへの旅は続く』(サトミ セキ)
 『気が付いたらボロ雑巾のようにベッドに転がされていた』(浅井拓也)
 『あたりの動物』(平井金司)
 『風船乗りの汗汗歌日記 その38』(大橋弘)
 『原村のこと(後編)』(清水耕次)

翻訳

 『幻想への挑戦 13』(ヴラジーミル・テンドリャコーフ/内山昭一:翻訳)
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 お問い合わせは、編集発行人である白鳥信也さんまで。

白鳥信也
black.bird@nifty.com




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言葉は鳥になって現実を離れ
樹の上から見下ろすように
きっと見える
花のかたち
まなざしの中に
生きていけるわたしたちの風が香る
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『日々のゆびさき 2020/06』(北爪満喜)より


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バスはついさっき故障したのに
車体は錆びつき
タイヤの空気は抜け
窓は曇ってツタが絡まり
型式まで古くなっている。

社会的常識を持っていただきたいと
警察官は乗客を諭すが
反応する乗客はひとりもいない。
バスが再び走り出すのを
我慢強く待っている。
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『バス』(小川三郎)より


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おまえたちはこういう局面になったことがないのか
爆発前の苦しみ
ふりしぶく雨の予兆
汚辱ジュクジョクまみれれれ
もう一度トイレのある階段の上部へ
しずしずと一段もう一段
品川駅トイレへのソロソロの旅路
判断ミスの連鎖の果てだ
トイレははるか平原の彼方のように思える
着いた先でまた待っている長い行列の末端に並んで
こんな破裂しそうな状況で
どう生きていけばいいのか
自己責任なんて言わないでくれ
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『荒野の品川駅』(白鳥信也)より


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二〇二〇年春から始まったコロナ禍で、国境を越えられなくなった。わたしは机の上のパソコンと紙の本だけで、さらにリトアニアへの旅を続ける。旅の記憶を核として、その周りに机上のパソコンで見た映像や取り寄せた二〇世紀前半のリトアニア詩人サロメーヤ・ネリスの詩を巻きつける。
 部屋の中で、リトアニアへの旅は予期せぬ色彩を交えて膨らんでいく。行ったのは一一月末、毎日降る冷たい雨、虐殺記念碑、笑わない静かな人々、それなのにリトアニアの記憶の中では花が開いている。
「この国では遊びに行くのは森しかないのです」
 ガイドのミンダウガスの言葉を反芻する。
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『リトアニアへの旅は続く』(サトミ セキ)より





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