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『Down Beat 16号』(柴田千晶、小川三郎、他) [読書(小説・詩)]

 詩誌『Down Beat』の16号を紹介いたします。


[Down Beat 16号 目次]
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『かぐや姫は今年も咲かない』(徳広康代)
『魂』(中島悦子)
『絵描き』(今鹿仙)
『洗濯屋』(小川三郎)
『明日になっている』(金井雄二)
『DOOR』(柴田千晶)
『音』(谷口鳥子)
『船岡山』『東京大明神』(廿楽順治)
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目には見えないけど
うすい膜のようで
竹槍で刺されたりすると
痛い

時には
偶然知らない土地で
生まれかわって
だから
いつも泣いている
――――
『魂』(中島悦子)より


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まっすぐ置いておいた花瓶が
不意に揺れて落ちるような
不安が胸に満ちてくる。

見渡すと
どの窓からも
ひとが外を眺めている。
どの窓にも花が飾ってある。
考えることは
みんなだいたい同じことだ。
だいたいみんな
同じ涙を流しているのだ。

私も
その涙でいいから
流してみたかった。
――――
『洗濯屋』(小川三郎)より


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汚れたドアのある画像をダウンロードして開いてみると、開いたドアの内側がふいに拡大され、壁に設置されたトイレットペーパーホルダーが見えた。ロールペーパーは逆向きにセットされていて、雑に千切ったペーパーの端がだらりと床まで垂れていた。さっきまで誰かがそこに居たかのように。
5月25日、緊急事態宣言全面解除 全国の陽性患者数の累計16581名。

針の束でチクチク刺されたような痛みが背中に広がってゆく。午前3時33分、「新型コロナウイルスの感染が増えています。外出は控えてください。」という防災無線が流れてきて、私の部屋の汚れたドアがゆっくりと閉じられてゆく。
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『DOOR』(柴田千晶)より





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