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『ハルハトラム 2号』(現代詩の会:編、北爪満喜、白鳥信也、小川三郎、他) [読書(小説・詩)]

 「現代詩の会」メンバー有志により制作された詩誌『ハルハトラム』2号(発行:2020年5月)をご紹介いたします。ちなみに前号の紹介はこちら。

2019年07月02日の日記
『ハルハトラム 1号』
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2019-07-02


[ハルハトラム 2号 目次]
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『12月25日』(他一編)(来暁)
『刀』(小川三郎)
『ふゆのこずえ』(北爪満喜)
『タリスマン』(恵矢)
『起床』(佐峰存)
『何者』(沢木遥香)
『幟の竿』(島野律子)
『ほろびいるかえる』(白鳥信也)
『蔦と夢』(橘花美香子)
『春の波』(長尾早苗)
『カリギュラ』(他三編)(水嶋きょうこ)
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 詩誌『ハルハトラム』に関するお問い合わせは、北爪満喜さんまで。

北爪満喜
kz-maki2@dream.jp




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赤服白ひげ その人は今日姿を現す
毎日祈ってすごしている
子どもたちといっしょに
祈っているのは
子どもたちのいる世界
祈りは子どもたちのもの
子どもたちを祈る祈りがある
――――
『12月25日』(来暁)より


――――
あなたはほろぼされてはいけない

きょうもあるいてきたのだから
たおれるかわりに
おれるかわりに
かおをあずける
かぞえきれない
さざんかがてのひらをひらいている
まつげのしずくをはらってくれる
――――
『ふゆのこずえ』(北爪満喜)より


――――
仰向けに地面に寝そべる身体からは
泥がにじんでいく
あいつはいつの間にか私の声帯に馴染んでいる
追い出すのを諦めて力を抜くと
身体の内側から
知っている匂いが漂ってくる

視界の外で殻の割れる音が響いた

昼間見た飛行機雲の痕跡が
暗い夜空に少し残っている
――――
『何者』(沢木遥香)より


――――
カエルが雨を浴びようと
ほとんど地面などない街の陰からはいでてくる
一匹 二匹 三匹いる
路面を静かに流れる水と
空から降ってくる水を全身で感じようとしている
俺も乾いている
早く家に帰ってビイルを飲もうか
いやそれより俺も感じたい
カエルになって感じたい
カエルになった俺は
黒のウィングチップも灰色の靴下も脱いで裸足になる
スッキリした気分
持ち帰りの仕事のつまったカバンも投げ捨てる
スッキリ スッキリ ゲコゲコ
足裏は冷やっこい
でもスッキリ
でもビイルも飲みたい ビイルカエルだ
――――
『ほろびいるかえる』(白鳥信也)より


――――
蔦に絡まれた我が家
それはやがて私の皮膚と入れ替わり
私の皮膚に蔦は爪をかけからみつき
私を蔦の成分として取り込もうと
うねりながら喰いこんでくる

私は絡みこんでくる蔦を握りしめ
土踏まずに力をいれる
私は自分軸をたしかめ
ぐいっとひっぱる
が、蔦はしがみつき
さらに、下半身に力をいれ
掛け声をかけ引き剥がす
そして、鋏で伐りおとした

細い蔦は皮膚をひっかきながら
全身を張り巡っている
――――
『蔦と夢』(橘花美香子)より


――――
大きなイヌと一緒だった
イヌはわたしの足首に指先に
濡れた鼻息をあてていく
広場の石畳は冷たい
秘めやかに泣く女たちの声が窓際に滲み
軍服を着た首の長い男が
鉄塔をよじ登っていく
――――
『ノスタルジー』(水嶋きょうこ)より全文引用





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