SSブログ

『Down Beat 15号』(柴田千晶、小川三郎、他) [読書(小説・詩)]

 詩誌『Down Beat』の15号を紹介いたします。


[Down Beat 15号 目次]
――――――――――――――――――――――――――――
『三年坂』『仁和寺』(廿楽順治)
『美術館』(徳広康代)
『ALL HEART』(中島悦子)
『MとN』(今鹿仙)
『産卵期』(小川三郎)
『眠りのなかで』(金井雄二)
『階段』(柴田千晶)
『とろりと。』『よるとあさとひると』(谷口鳥子)
――――――――――――――――――――――――――――


お問い合わせは、次のフェイスブックページまで。

  詩誌Down Beat
  https://www.facebook.com/DBPoets




――――
ここは写真OKだから
スマホで写真を撮る
一つ撮ると
次も撮りたくなって
タイトルと絵と
セットで次々撮りだす
写真を撮ったら
目の前のその絵ではなく
もう次の絵を見ている
――――
『美術館』(徳広康代)より


――――
逆さになった母を
手で押してぶらんぶらん揺らす。
すると狂っていたバランスが
遠心力でうまく整い
女優みたいに
きれいな顔の母になる。

そんな顔をしていた時から
ご法度のものを売りさばき
縁切り契りを繰り返した。
沈黙にまで値をつけて売るほどの
商売人であった。
――――
『産卵期』(小川三郎)より


――――
先生の部屋はもと雀荘で 部屋には小さな流し台と 二段ベッドと
壁一面の本棚 部屋のまん中には雀卓が一つあった あたしの原稿
を添削したり 競輪の予想をしたり ときどき仕事をして ごはん
を食べるのも雀卓の上だった

「雀荘 伽耶」の看板のかかる薄暗い階段を あたしは拙い原稿を
持って なんどものぼった 留守のときはドアノブに 原稿を入れ
たビニール袋を吊し帰った

夏にはとり壊されるという先生の家の 薄暗い階段の途中に 段
ボール箱がひとつ置かれていた まるで仏壇みたいだ あたしが階
段をのぼってくることをはばむように その先の闇に 先生の足が
見える 最上段に腰かけて 先生はきっと予想紙を読んでいる
――――
『階段』(柴田千晶)より





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ: