『モーアシビ 第38号』(白鳥信也:編集、小川三郎・他) [読書(小説・詩)]
詩、エッセイ、翻訳小説などを掲載する文芸同人誌、『モーアシビ』第38号をご紹介いたします。
[モーアシビ 第38号 目次]
――――――――――――――――――――――――――――
詩写真(森岡美喜)
詩
『光の十字』(北爪満喜)
『水の夢(改)』(北爪満喜)
『虫の幸福』(小川三郎)
『花の名前』(森ミキエ)
『水の気配』(島野律子)
『風が吹いている』(白鳥信也)
詩写真(森岡美喜)
散文
『旅の時間二〇一九……変貌するベルリン篇』(サトミ セキ)
『通院』(平井金司)
『開拓村』(浅井拓也)
『大分便り』(川上美那子)
『原村のこと(前編)』(清水耕次)
『風船乗りの汗汗歌日記 その37』(大橋弘)
翻訳
『幻想への挑戦 12』(ヴラジーミル・テンドリャコーフ/内山昭一:翻訳)
――――――――――――――――――――――――――――
お問い合わせは、編集発行人である白鳥信也さんまで。
白鳥信也
black.bird@nifty.com
――――
青いポールを見つめ続けていると
目を離したとき赤になるので
見つめない
――――
『水の夢(改)』(北爪満喜)より
――――
花は嫌だ
増してやひとは
ならばせめて虫になればと
土から頭を抜こうと悶え
ようやく抜いて
よく見てみれば
顔の形が気持ち悪い。
――――
『虫の幸福』(小川三郎)より
――――
この重戦車のようなフル装備の楽器を弾きこなすことは、もう自分にはかなわない。チェンバロとピアノは本当に違う楽器なのだ、と心底実感した。
ピアノに未練のあった私だが、今回ベルリンのスタインウェイハウスに来て、これからの時間はよそ見をせずチェンバロだけを弾いていこうと諦めがついた。これだけでもベルリンに来た甲斐があったかもしれない。
――――
『旅の時間二〇一九……変貌するベルリン篇』(サトミ セキ)より
――――
四年前に八十七歳で亡くなった母のおそらく最後の言葉。
「丈夫だったのになんでこんなになってしまったのだろう」
方言を標準語に変えてあるが、炬燵に伏してそう言ったのが、たまたま脇にいた私に聞こえた。あのあと、もう母と会話はできなくなった。私もそういう年域に近づいているのだろう。
――――
『通院』(平井金司)より
――――
私の部屋は六階の南むきで、ガラス戸ごしに、今は赤や黄に彩られた低い山とその上に広がる大空に面しており、晴天には、その空を雲が二つ、三つと横切っていきます。あのどの雲に亜紀や夫は乗っているのだろうとあかずに山と空を眺め、早く私もあの雲にのって自由に空を駆け巡りたいなどと思いますが、天は思うようには人の運命を自由にはさせてくれませんね。
――――
『大分便り』(川上美那子)より
[モーアシビ 第38号 目次]
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詩写真(森岡美喜)
詩
『光の十字』(北爪満喜)
『水の夢(改)』(北爪満喜)
『虫の幸福』(小川三郎)
『花の名前』(森ミキエ)
『水の気配』(島野律子)
『風が吹いている』(白鳥信也)
詩写真(森岡美喜)
散文
『旅の時間二〇一九……変貌するベルリン篇』(サトミ セキ)
『通院』(平井金司)
『開拓村』(浅井拓也)
『大分便り』(川上美那子)
『原村のこと(前編)』(清水耕次)
『風船乗りの汗汗歌日記 その37』(大橋弘)
翻訳
『幻想への挑戦 12』(ヴラジーミル・テンドリャコーフ/内山昭一:翻訳)
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お問い合わせは、編集発行人である白鳥信也さんまで。
白鳥信也
black.bird@nifty.com
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青いポールを見つめ続けていると
目を離したとき赤になるので
見つめない
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『水の夢(改)』(北爪満喜)より
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花は嫌だ
増してやひとは
ならばせめて虫になればと
土から頭を抜こうと悶え
ようやく抜いて
よく見てみれば
顔の形が気持ち悪い。
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『虫の幸福』(小川三郎)より
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この重戦車のようなフル装備の楽器を弾きこなすことは、もう自分にはかなわない。チェンバロとピアノは本当に違う楽器なのだ、と心底実感した。
ピアノに未練のあった私だが、今回ベルリンのスタインウェイハウスに来て、これからの時間はよそ見をせずチェンバロだけを弾いていこうと諦めがついた。これだけでもベルリンに来た甲斐があったかもしれない。
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『旅の時間二〇一九……変貌するベルリン篇』(サトミ セキ)より
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四年前に八十七歳で亡くなった母のおそらく最後の言葉。
「丈夫だったのになんでこんなになってしまったのだろう」
方言を標準語に変えてあるが、炬燵に伏してそう言ったのが、たまたま脇にいた私に聞こえた。あのあと、もう母と会話はできなくなった。私もそういう年域に近づいているのだろう。
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『通院』(平井金司)より
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私の部屋は六階の南むきで、ガラス戸ごしに、今は赤や黄に彩られた低い山とその上に広がる大空に面しており、晴天には、その空を雲が二つ、三つと横切っていきます。あのどの雲に亜紀や夫は乗っているのだろうとあかずに山と空を眺め、早く私もあの雲にのって自由に空を駆け巡りたいなどと思いますが、天は思うようには人の運命を自由にはさせてくれませんね。
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『大分便り』(川上美那子)より