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『ふたり誌 Duralmin』(岩垂由里子、中村梨々) [読書(小説・詩)]

 岩垂由里子(丸亀たまき)さん、中村梨々さんによる、ふたり詩誌。同人誌発行は2019年11月です。

 120ページほどの白いお洒落な詩誌です。構成が工夫されており、

左綴じの表紙は
「ジュラルミン  中村梨々、岩垂由里子」
となっており、左開きで読むと中村梨々さんの詩集となります。

右綴じの表紙は
「Duralmin Lilium autum Orbis」
となっており、右開きで読むと岩垂由里子(丸亀たまき)さんの詩集となります。
ラテン語知らないのですが、おそらく著者名のところは「リリとタマ」というお二人の愛称なのでしょう。




『ジュラルミン  中村梨々、岩垂由里子』


――――
海に捨てるのが一番いいような気がするけど
海から生まれた私を海に捨てるのは
返すとおなじことだから
できれば
全然違う場所に
一本の木がぽつんとたっているようなところに
返すことにならない場所に
できれば

私を捨てたい

もう誰も拾わないですむように
――――
「テネレの砂」より


――――
きみは いつも ひとつじゃなくて
いちどに あらわれる
さんそがおおすぎても つたえられない
もいちど よそおって みる

てのひらを うえに
そらを したに
じめん を およぐ くじら
――――
「さみしいときは、たてにくしざして」より


――――
こうしにのって
なまくりーむのとうきょへ
いくわ

あたしはいつか
とうきょの
にゅうぎゅうに
ちゅうする
くちびるにくっついた
しろっぷを
したでなめる
――――
「よるはこうしにのって」より




『Duralmin Lilium autum Orbis』


――――
夏を欠落で片付けたものへの罰として
いくつもの欠落を紅でかさねた彼岸花
後ろ手に閉ざして去りたいはげしさが
どこまでも眼前にひろがる
たしかめがたい神経を浅く深くゆすり
穂へとふくらませ渦巻かせてゆく
高みのひとりに捧げる白髪のように
――――
「彼岸花」より


――――
さぁっと
風ひとすじに燃える紅葉の
向かいに紐のごとく立つ
自ら引けば明りはともるが
結び目が流れを堰くかも知れぬ
鬼灯をひびかせるうつろが潰れるかも知れぬ
――――
「紅葉」より



――――
         元気を出そう 黙々と歩
行訓練を行う患者達の往還は 物理的な反復
が精神的な回遊の起動因となること 反復が
個性を 個性が反復を支えることを示してい
る 元気を出そう 高層ビルの窓は青く オ
フィスの人々は茶柱のようだ 不謹慎? 癒
えるためには ヒトの大群にも瑞兆を見よう
ここにいう元気とは高笑いの類ではない
人間は様相を変えるだけで たやすく割れは
しない 空のように ついに砕け散ったとし
ても 空にかえってひとつになる と確信し
て ため息を深呼吸とよぶ楽観である
――――
「空元気」より





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