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『空飛ぶクルマ 電動航空機がもたらすMaaS革命』(根津禎) [読書(サイエンス)]

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 2018年になると、長らく空飛ぶクルマの製品化に取り組んでいた新興企業が製品化を発表したり、これまで「ステルス」状態にあった新興企業が表に出たりと、空飛ぶクルマの実現に向けて、業界が大きく動いた。さらにフランスAirbus(エアバス)グループや米Boeing(ボーイング)、英Rolls-Royce Holdings(ロールス・ロイス ホールディングズ)といった航空機分野の大手メーカーも、その進捗状況をアピール。自動車メーカーも取り組みを明かすなど、大小や新旧の入り乱れた、業界をまたぐ激しい主導権争いが勃発している。
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単行本p.4


 渋滞に巻き込まれることなくビルの屋上から屋上へと飛ぶタクシー。内燃機関(ジェットエンジン等)がなくCO2を排出しない航空機。数年後に迫った商用サービス開始を見据えた「バッテリーとモーターで空を飛ぶ航空機」の開発競争と次世代交通インフラ支配をめぐる激しい攻防の現状を紹介してくれる一冊。単行本(日経BP)出版は2019年4月、Kindle版配信は2019年4月です。


[目次]

序章 離陸する「空飛ぶクルマ」、先行する海外勢を日本が追う
第1章 勃興する新市場「空飛ぶクルマ」
第2章 電動化が変える航空機市場
第3章 破壊的イノベーションに備える航空大手
第4章 加速する電動化技術の革新
第5章 電動航空機を日本の基幹産業に


序章 離陸する「空飛ぶクルマ」、先行する海外勢を日本が追う
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 空飛ぶクルマの市場が本格化するのは2025年以降とされ、「ずっと先の話」と思われるかもしれないが、新しい乗り物だけに、安全性の確保や安全基準の策定、運航管理システムの整備、技術開発など、実現に必要なエコシステムの形成に時間がかかる。すなわち、今まさに取り組み始めないと世界競争を勝ち抜けない。
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単行本p.4


 次世代の交通運輸システムを大きく変革する電動航空機。激化するその開発競争の現状を簡単にまとめます。


第1章 勃興する新市場「空飛ぶクルマ」
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 予測の幅は広いものの、約6.4兆円を超える新市場が誕生する可能性があることから、大手企業からスタートアップと呼ばれるような新興企業まで、国内外の数多くの企業がeVTOL機や同機を利用した都市航空交通の分野になだれを打って参入してきている。さらに自動車業界という「異業種」からの参戦も相次ぐ。すなわち、空飛ぶクルマを舞台に、「新興企業 vs 大手企業」「航空機業界 vs 自動車業界」「海外 vs 日本」といった構図で激しい主導権争いが始まっているのである。
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単行本p.23


 ドライブモードで地表を走行し、フライトモードにチェンジして離陸する。あるいは垂直離着陸可能な小型電動航空機eVTOL。「空飛ぶクルマ」の様々な方式や技術、主なプレーヤー、その狙い、市場規模予測など、基礎情報を確認します。


第2章 電動化が変える航空機市場
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 空飛ぶクルマこと、eVTOL機の実現に不可欠な電動化技術。同技術に目を向けると、それ単独で大きな産業に成長する可能性が高い。電動化技術の応用先は、回転翼を備えたeVTOL機にとどまらず、「ジェネラルアビエーション」「ビジネスジェット」と呼ばれるような小型の固定翼機、「リージョナルジェット」といった数十人乗りの中型機、「細胴(ナローボディ)」や「太胴(ワイドボディ)」といった100人以上が乗る大型機(旅客機)もその範疇にあるからだ。
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単行本p.98


 回転翼、固定翼、小型、中型、大型。あらゆるタイプの航空機に大きなインパクトを与える電動化技術。空の技術革新を目指す航空機業界の動向をまとめます。


第3章 破壊的イノベーションに備える航空大手
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 ここまで紹介したように、空飛ぶクルマや航空機の電動化を舞台に、新興企業や自動車業界の企業が航空機業界に攻め入っている。それを迎え撃つのは、航空機メーカーや航空機用装備品メーカーなどである。
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単行本p.114


 エアバス、ボーイング、ベルヘリコプター、ロールスロイス。電動航空機と電動化技術の分野で主導権を狙う大手企業の動向をまとめます。


第4章 加速する電動化技術の革新
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 ハイブリッド車や電気自動車といった電動車両の開発競争によって、駆動用のモーターやモーターを制御するインバーターといったパワーエレクトロニクス技術は従来に比べて性能が向上した。(中略)それでも、電動航空機の時代を迎えるには、一層の性能向上が必須である。中でも軽量化、すなわち「高密度化」がカギを握る。
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単行本p.150


 電動化技術の中核であるモーターとインバーターの軽量化。さらに超電導モーターの開発競争。技術開発に邁進するシーメンスと、それに挑戦する新興企業の動きをまとめます。


第5章 電動航空機を日本の基幹産業に
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 このように、eVTOL機を手掛ける日本の新興企業も登場し始めるなど、産・官・学を巻き込んだ大きなうねりになりつつある。モーターやインバーター、パワーデバイス、2次電池といった要素技術で強みを持つ日本勢が、先行する欧米勢に追い付けるか。ここ5年が勝負になりそうだ。
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単行本p.184


 経済産業省と国土交通省が共同でたち上げた官民協議会、JAXA宇宙航空研究開発機構が中心となってたち上げたコンソーシアムなど、欧米に比べて出遅れている日本の巻き返しをかけた動きをまとめます。



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