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『ショーン・タンの世界』(ショーン・タン、岸本佐知子、金原瑞人、他) [読書(教養)]

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タンは、私たちが普段は忘れていたり、見ないようにしていたり、目隠しされている現実や記憶を鮮やかにイメージに変え、私たちの心に困惑を残す。そして、タンの物語の住人は困惑を受け入れることの恐さや奇妙な心地よさを教えてくれる。
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単行本p.79


 <企画展>「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」(ちひろ美術館・東京、2019年5月11日~7月28日)に合わせて製作されたショーン・タンのガイドブック。単行本(求龍堂)出版は2019年5月です。


 企画展については次のページを参照してください。

  ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ
  http://www.artkarte.art/shauntan/


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ショーン・タンの作品は独特だ。親しみがあると同時に謎めいており、明快でありながら容易に理解し難いところがあり、ハートフルな面もあれば皮肉に満ちた面もあり、それらが見事に具現化されている。そんな彼の物語、絵画、彫刻などの作品は、白昼夢の中で構成されて現れたように見えるかもしれないが、実際のところ、多くの実験や遊びを通じた検証の末に作品化されている。
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単行本p.150


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 エリックやカラスのまなざしは伝染します。ショーン・タンの作りだす、不思議であたたかい、美しくてちょっと怖い、魔術的なのにどこかなつかしい世界を心ゆくまで味わって本を閉じると、なんだか世界が前とは少し変わって見えないでしょうか。いつもは気にも留めなかった物や、人や、出来事に、そう世界のはしっこに、前よりもすこし視力がよくなったような。
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単行本p.7


 130点におよぶ作品を掲載したガイドブックです。特に『アライバル』『ロスト・シング』『遠い町から来た話』『夏のルール』『内なる町から来た話(邦訳仮題)』については、それぞれ一章が割り当てられ、作品からの抜粋、習作やスケッチ、ノートなどの資料がぎっしりと並んでいます。未訳の最新刊『内なる町から来た話』の一部が掲載されているのが嬉しいところ。

 さらに油絵、立体造形、インタビューなど盛りだくさん。インタビューでは今後の予定が語られているところが素敵です。岸本佐知子さん、金原瑞人さんをはじめとするエッセイも収録。充実した一冊となっています。

 「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」を観てから美術館付属ショップで購入することをお勧めしますが、一般書店でも購入できます。手に持っているだけで、何かの魔法を感じる素敵なガイドブックです。



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