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『予測の科学はどう変わる? 人工知能と地震・噴火・気象現象』(井田喜明) [読書(サイエンス)]

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 自然災害は人類共通の脅威ですから、原因となる自然現象を正確に予測することは人類の悲願ともいえます。正確な予測を実現するために、人工知能は強力な武器となるはずです。人工知能の活用で、行き詰まっている予測方法に糸口が見えたり、新たな展望が開けたりする可能性は少なくないはずです。この問題に多くの人々が興味を抱かれることは、研究を盛り上げ、開発を支えることになります。
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単行本p.116


 地震や気象など自然現象の多くはモデル化が不完全であり、また複雑でカオス的な振る舞いを見せるため、物理法則に基づいた演繹的手法により正確な予測を行うことには本質的な限界がある。この行き詰まりを解決する糸口として、人工知能を活用した新たな予測手法に期待が集まっている。しかし、それは本当に有効なのだろうか。人工知能による災害予測の実施例を紹介し、その現状と課題を明らかにするサイエンス本。単行本(岩波書店)出版は2019年2月です。


[目次]

第1章 予測の基礎は科学の体系
第2章 人工知能が予測に参入
第3章 気象現象の予測
第4章 マグマの活動と噴火予知
第5章 地震予知と津波予報
第6章 人工知能時代の予測と社会


第1章 予測の基礎は科学の体系
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 地震の規模別の頻度(発生数の割合)はマグニチュードに依存してグーテンベルク=リヒターの法則を満たしますが、この統計法則は地震の頻度が断層の大きさのべき乗に比例することを示します。地震の発生過程はフラクタル性をもつのです。噴火発生時期の分布にもフラクタル性が認められるという指摘があります。
 気象現象ばかりでなく、地震や噴火の発生もフラクタルやカオスの性質をもち、それが予測を難しくする基本的な原因であると考えられます。しかし、地震や噴火の発生にフラクタルやカオスがどう関係するのか、究明はあまり進んでいません。
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単行本p.13


 自然科学に基づいた「予測」とはどういうものかを紹介し、フラクタルやカオスなど自然現象の演繹的予測を困難にしている原因について解説します。


第2章 人工知能が予測に参入
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 現在までに予測の問題に利用されてきた人工知能技術は、隠れ層が2層程度までのANNなど、ほとんどが比較的単純なもので、深層学習の範疇には入りません。深層学習は予測の問題にはまだ本格的に活用されていないのです。
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単行本p.34


 人工知能、とくに深層学習(ディープラーニング)による機械学習の仕組みを概説します。


第3章 気象現象の予測
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 気象現象の演繹的な予測がもつこれらの弱点は、人工知能技術を用いた経験的な予測で補えるでしょうか。それを考える題材として、まず熱帯低気圧の進路予測に人工知能技術を活用した事例を取り上げます。また、長期にわたる予測への活用には、モンスーン地帯の雨季の降雨量の変動を予測した事例があります。少し変わった応用例として、樹木の年輪から過去の気象条件を復元する事例をみましょう。
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単行本p.48


 天気予報や台風進路予測など気象現象の予測がどのように行われているかを解説し、人工知能による予測が試みられた事例をいくつか紹介します。


第4章 マグマの活動と噴火予知
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 このような状況を改善する地道な方法は、マグマの上昇過程や付随する現象の理解を深めて、シミュレーションの精度を高めることです。火山学の研究の多くはそれを目標に進められています。もうひとつの方法は、様々な知識を体系化して経験的な予測内容を改善することで、人工知能技術の活用はその手段になります。
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単行本p.66


 火山噴火の予測に人工知能が使われた事例をいくつか紹介します。


第5章 地震予知と津波予報
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 このシステムの特徴は、ANNの学習に津波の経路を追跡するシミュレーションが使われている点です。シミュレーションは実際の計測データのない経路についても実行できますから、多数の教師データを容易に提供できます。シミュレーションにはかなりの計算時間がかかりますが、計算結果を集めてあらかじめ学習を済ませておけば、ANNによる予測結果はほぼ瞬時に得られます。
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単行本p.95


 周期性、確率的要素、フラクタル性、階層構造など様々な性質が絡み合って予測を困難にしている地震、そして津波。計算機シミュレーションと機械学習の組合せによる予測手法はどのくらい期待できるのかを探ります。


第6章 人工知能時代の予測と社会
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 人工知能技術の防災への活用は現代社会で関心の高いテーマです。防災機関などで現在開発が具体的に検討され計画されている機能には、効率的な防災対応のために関連する諸情報を集約する機能、住民からの問い合わせに対応する機能、ドローンで撮影された画像を解析して災害の実態を素早く把握する機能などがあるようです。
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単行本p.108


 防災への人工知能の活用は「予測」だけではありません。災害が起きてから、その実情を早く正確に把握すること、適切な防災情報の作成、被災地や被災者とのコミュニケーションなど、人工知能の利用が期待されている機能について解説し、これからの人工知能の社会的活用について考えます。



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