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『数学の真理をつかんだ25人の天才たち』(イアン・スチュアート、水谷淳:翻訳) [読書(サイエンス)]

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 生まれつきの数学者に数学をやめさせるには、牢屋に閉じ込めるくらいしかないが、それでも壁を引っかいて数式を書くだろう。
 本書で紹介した偉人たちは、つまるところその点でみな共通している。彼らは数学を愛していた。数学に取りつかれていた。ほかのことはいっさいできなかった。もっと稼げる仕事をあきらめ、家族の忠告に背き、多くの仲間から変人扱いされても気にせずに努力を重ね、評価も見返りも得られずに死んでいくことも厭わなかった。第一歩を踏み出すためだけに、何年ものあいだ無給で講義をおこなった。偉人たちは、突き進んでいたからこそ偉人なのだ。
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単行本p.416


 数学においては、真理は永遠である。証明された定理は未来永劫に渡って否定されない。こうした永遠の真理を見つけたのは、実際のところ、どのような人々なのだろうか。数学史に輝かしい業績を残した数学者から25名を選んで、その生涯と業績の意義を分かりやすく紹介してくれる一冊。単行本(ダイヤモンド社)出版は2019年1月、Kindle版配信は2019年1月です。


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 世界中の黒板やホワイトボード、そしてもちろんナプキンや、ときにテーブルクロスには、難解な記号や奇妙ないたずら書きがぎっしり書き込まれている。そうしたいたずら書きは、10次元多様体から代数的数体まであらゆるものを表わしているのかもしれない。
 アダマールの推算によると、数学者のうちおよそ90パーセントは視覚的に考え、10パーセントは形式的に考えているという。私の知り合いに一人、3次元の形をイメージするのが苦手な一流のトポロジー学者がいる。万人に共通する「数学的知性」など存在しない。みな服のサイズが違うのと同じだ。
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単行本p.412


 25名の数学者について、その人生や人柄、エピソード、業績とその意義を、数学にそれほど興味のない読者にも楽しめるように語ってくれます。何しろ著者イアン・スチュアートは、難しい数学の話題を誰にでも楽しめるように解説する名手。これまでに紹介したことのある著作はこちらです。


2018年06月07日の日記
『無限』
https://babahide.blog.so-net.ne.jp/2018-06-07

2010年09月09日の日記
『数学の魔法の宝箱』
https://babahide.blog.so-net.ne.jp/2010-09-09

2010年06月09日の日記
『数学の秘密の本棚』
https://babahide.blog.so-net.ne.jp/2010-06-09


 本書を一読すれば、数学者のイメージが変わるでしょう。例えばアイザック・ニュートンには、(善かれ悪しかれ)ごく一般的なイメージとは別に、こういう一面があったのかと。


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 ニュートンは、ドアに穴を開けてそこにフェルトの切れ端を吊り下げた。キャットフラップの発明だ。その猫が子供を産むと、ニュートンは大きい穴の隣に小さい穴を開けてやったという。
(中略)
 錬金術に関するニュートンの文書はおそらく実験室の火事でほとんど失われ、20年におよび研究の結果は煙となって消えてしまった。飼っていた犬が原因だったらしい。ニュートンはその犬に、「おいダイヤモンド、ダイヤモンド、おまえは自分がしでかしたことがぜんぜんわかっていないのか」と叱ったと言われている。
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単行本p.86、97


 多くの項目は、決めゼリフというか、その人物を的確に評した(多くの場合、他の著名数学者の)言葉の引用で終わっており、かっこいいのです。


レオンハルト・オイラー
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 ラプラスは、オイラーの果たした役割を次のように見事に総括している。「オイラーを読め。とにかくオイラーを読め。彼は我々すべての師だ」
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単行本p.114


オーガスタ・エイダ・キング
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 1843年にバベッジはエイダのことを次のように評している。「この世とそのあらゆる困難、そしてできれば大勢のぺてん師のこと、要するにすべての事柄は忘れよう。しかし数の魔女のことは忘れてはならない」。
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単行本p.196


エヴァリスト・ガロア
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 ポアンカレはあるとき、群は「数学全体」をその真髄まで削ぎ落としたものであるとまで語った。大げさな言葉だが、気持ちはわかる。
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単行本p.183


ベルンハルト・リーマン
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 素数の壮麗な交響曲も、ゼータ関数の一つ一つの零点が奏でる個々の「音程」に分解される。それぞれの音程の大きさは、それに対応する零点の実部の大きさによって決まる。(中略)リーマンはゼータ関数に関する深い考察をおこなったことで、素数の音楽家とみなされているのだ。
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単行本p.231


[目次]
1. アルキメデス
    私の描いた円を乱すな
2. 劉徽
    道の師
3. ムハンマド・アル=フワーリズミー
    アルゴリズミはこう言った
4. サンガーマグラーマのマーダヴァ
    無限の革新者
5. ジローラモ・カルダーノ
    ギャンブルをする占星術師
6. ピエール・ド・フェルマー
    最終定理
7. アイザック・ニュートン
    世界の体系
8. レオンハルト・オイラー
    我々すべての師
9. ジョゼフ・フーリエ
    熱を操る者
10. カール・フリードリヒ・ガウス
    見えない足場
11. ニコライ・イワノヴィッチ・ロバチェフスキー
    ルールを曲げる
12. エヴァリスト・ガロア
    根と革命化
13. オーガスタ・エイダ・キング
    数の魔女
14. ジョージ・ブール
    思考の法則
15. ベルンハルト・リーマン
    素数の音楽家
16. ゲオルク・カントール
    連続体の枢機卿
17. ソフィア・コワレフスカヤ
    初の偉大な女性
18. アンリ・ポアンカレ
    怒濤のように浮かぶアイデア
19. ダフィット・ヒルベルト
    我々は知らなければならない、我々は知ることになろう
20. エミー・ネーター
    学問の慣例を覆す
21. シュリニヴァーサ・ラマヌジャン
    公式人間
22. クルト・ゲーデル
    不完全で決定不可能
23. アラン・チューリング
    この機械は停止する
24. ブノワ・マンデルブロ
    フラクタルの父
25. ウィリアム・サーストン
    裏返しにする



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