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『七人のイヴ (1)』(ニール・スティーヴンスン、日暮雅通:翻訳) [読書(SF)]

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 これは人類が直面した最大の試練だ。しかし、われわれは生き残る。宇宙にあるものを利用して、“われわれの遺産”を保存しておくための場所をつくったり、地球から運んだものを改良したりする。最後にはきっと、われわれが帰れる日がやってくる。〈ハード・レイン〉は永遠には続かない。
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新書版p.260


 あるとき月が砕け、巨大な破片の集団と化した。それぞれの破片は衝突を繰り返しながらさらに細かく砕けてゆき、やがて軌道上から次々と落下してゆく。わずか二年後には地表は巨大隕石の連続爆撃により灼熱の炎に覆われ、あらゆる生物は死滅するだろう。だが、人類はあきらめなかった。軌道上へ、宇宙へ、その先へ。わずかな人数であっても生き延び、人類の遺産を未来へとつなぐのだ。ニール・スティーヴンスンのハードSF大作、その第1巻です。新書版(早川書房)出版は2018年6月、Kindle版配信は2018年6月。


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「それは太陽系が形成された原始時代以降に地球が経験したことのない、無数の隕石による爆撃です。隕石が落ちてきて、その燃えさかる尾が見えたことがありますね? ああいうものが無数にあり、合体して火の玉になっては、ほかのものすべてを燃やしていくのです。地球上のすべてが不毛の地となります。氷河も煮え立つでしょう。生き残る唯一の方法は、大気圏から逃げ出すしかありません」
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新書版p.44


 連続的な巨大隕石落下〈ハード・レイン〉による人類滅亡まで、残された時間はわずか二年。だが人類はあきらめなかった。少しでも多くの人間を救うために〈クラウド・アーク〉計画がスタートする。既に軌道上にある国際宇宙ステーションを足掛かりに、宇宙に居住環境を作り上げるという巨大プロジェクトだ。


 しかし、わずか二年で何が出来るだろう。地上からの支援なしに大人数を恒久的に活かし続けることなど、現在の技術ではとうてい不可能ではないだろうか。本当に〈クラウド・アーク〉計画は実現可能なのか。


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 彼らが宇宙でやっていることはすべて、地上にいる70億人への子守歌にしかすぎない。実際には機能しない仕事の、準備を整えているというふり。〈クラウド・アーク〉の人々は、地上に残された人々よりも、わずか二、三週間長く生きるだけだということ。
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新書版p.157


 地上にいる指導者たちの本音は、大衆がパニックを起こさないように、何か希望があるふりをすること。実際には期待していないのだった。〈クラウド・アーク〉計画は絶望に対する鎮痛剤に過ぎないのだ。

 だが、それがどうした。国際宇宙ステーションにいる人々はすでに決意を固めていた。生き延びる。それも長期的に。何千年先の未来に、人類を送り届けるためにあらゆる手段を尽くす。宇宙を克服するのだ。


 古き良きSFを現代に蘇らせた、オールドSFファン感涙の物語。現在よりわずか先の近未来、今より少しだけ進んだテクノロジー。それで地表からの支援なしに宇宙空間に「千人を超す人数が恒久的に活きてゆける居住環境」を作り出すことなど可能なのか。まず無理と思う反面、絶対不可能とも言い切れない。このぎりぎりの状況設定が魅力的です。一冊の原書を三分割したとのことで、2巻と3巻も楽しみ。



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