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『マチュラン・ボルズ公演』 [ダンス]

 2018年9月24日は、夫婦でKAAT神奈川芸術劇場に行って、フランスのサーカス・アーティスト、マチュラン・ボルズによる二本立て公演を鑑賞しました。


La marche
『ラ・マルシュ』(マチュラン・ボルズ)

 マチュラン・ボルズによる15分のソロ作品。舞台上に設置された、巨大な「ハムスターの回し車」の中に入って歩くボルズ。ハムスターと同じように、ずんずん歩いて回し車を回転させるところから始まって、次第に様々な「歩行」方法を試してみます。

 歩行や散歩に関するテキストが録音で読み上げられるなか、歩行はどんどんアクロバティックな動きになってゆき、やがて英国“ばか歩き省”からスカウトされそうな具合に……。


ALI
『アリ』(マチュラン・ボルズ、エディ・タベ)

 二人による25分のデュオ作品。薄暗い照明、再び「歩行」を始めるボルズ。今度は二人組です。二人とも両腕にロフストランド杖(腕に装着する歩行補助杖)をつけており、それを使ってスムーズに歩き続けるのですが、どこか違和感が。あまりにもスムーズに歩行しているので気づくのが遅れたのですが、何と脚が全部で三本しかない。つまり、「二人三脚」なのです。

 若いころに癌で左足を切除したというエディ・タベは、片足だけのジャンプ後方宙返りといった驚くべきアクロバットを披露して観客の度肝を抜きます。二人で組んで様々なアクションをとるうちに、健常者と障がい者の区別がなくなってゆくところがポイント。二人が重なっていると「中央の脚」がどちらのものであるかが分からなくなる錯視効果も凄い。

 二人の関係は決して「仲のよい友人」でも「障がい者とそれを支える健常者」でもなく、むしろ険悪で、ときに喧嘩や仲違いも起こします。しかし、二人が様々な二人三脚アクションを通じて身体と身体をぶつける無言の会話を続けるうちに、そこにある深い信頼や敬意が観客に伝わってくるのです。

 フィジカルなバランス感覚だけでなく、見世物にも感動ポルノにもしない演出のバランス感覚も素晴らしい。人間の強さをストレートに見せてくれるパフォーマンスでした。



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