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『SFマガジン2018年6月号 ゲームSF大特集』 [読書(SF)]

 隔月刊SFマガジン2018年6月号の特集は、「ゲームSF」でした。


『博物館惑星2・ルーキー 第三話 手回しオルガン』(菅浩江)
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「問題は、工芸部門と音楽部門の主張が異なっているという点です。〈ミューズ〉は、音楽を時代と共に常に流れるものと見做し、このままのパフォーマンスを望んでいます。〈アテナ〉は、先日もお話しした新しい保護剤で、手回しオルガンがこれ以上劣化するのを止め、工芸品としての価値を優先しようと考えています。
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SFマガジン2018年6月号p.122

 既知宇宙のあらゆる芸術と美を集めた小惑星、地球-月のラグランジュ5ポイントに置かれた博物館惑星〈アフロディーテ〉。その創立五十周年に向けた企画の一環として、〈アフロディーテ〉黎明期に描かれた手回しオルガンと演奏者の現在を取材したドキュメンタリー番組が制作される。だが、手回しオルガンは歳月を経て痛んでおり、修復し保護すべきか、そのまま演奏させるべきか、議論が起きる。さらには所有権をめぐるいざこざまでが起き、若き警備担当者である主人公を悩ませるのだった。『永遠の森』の次世代をえがく新シリーズ第三話。


『ひとすじの光』(小川 哲)
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 僕に文才はない。だからとにかく、叩き台となる何かを書くしかない。父の言葉を借りるなら「死ぬ気」で書く。それだけだ。
 スペシャルウィークだって同じだ。ダービーで勝とうが、京都大賞展で負けようが、彼はただ芝生の上を「死ぬ気で」走っただけだ。獲得した賞金も、タイトルも、彼の生活の本質的な部分を変えることはない。ただゴール板を目指して走るだけ。
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SFマガジン2018年6月号p.209

 いま一つ芽が出ない作家。ある競走馬の血筋をめぐる話を書くうちに、次第に自分がその歴史を「知っている」ことに気づく。だが、生まれるより前のことを自分が覚えているはずはない。しかし、理由は何であれ「記憶」は次々とあふれだし、作家は一心に競走馬と馬主の歴史を書き続けるが……。競走馬と自分を重ね合わせ、行く手に一筋の光明を見いだす作家の感動的な物語。


『十二月の辞書』(早瀬耕)
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 電話が切れて、南雲は、冷たいベンチに腰掛ける。十二月三十一日の辞書があったとすれば、そこには、娘の恋人への警告が記されていたかもしれない。デジタル技術なんて小手先に過ぎない、と。
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SFマガジン2018年6月号p.260

 かつての恋人から、亡くなった父の部屋に隠されているはずの絵を探してほしいという依頼を受けた南雲薫。自分の死後に家族に見つかってはならず、かといって、こっそり隠すわけにはいかない、そんな複雑な事情のあるポートレート。故人はどうやってこの難問を解決したのか。南雲は、研究室の学生である佐伯衣理奈と共に「部屋に堂々と飾ってあるが、誰も見つけることが出来ない」絵の謎に取り組むことになった……。連作短編集『プラネタリウムの外側』に収録されなかった、シリーズの一篇。



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